シナリオ「亡者の搦手」 ■シナリオ諸元 推奨プレイヤー人数:2〜4人 推奨PC逸話数:1つ 篇:1 ■物語の概要 ●物語の背景  騎士たちは、領主マグナスが治める土地の廃村にて、冥王軍の一味が目撃されたという情報を聞きつける。  騎士たるもの、侵攻を防ぐために冥王軍は討たねばならぬ。  それぞれの動機から、騎士たちは冥王軍討伐へ向かう。  騎士たちは、ひとまず情報収集のため、領主マグナスが住む館へと向かう。  その館で、騎士たちは、同じく冥王軍を討伐せんと出向いた、一人の人物と出会う。  彼女こそ、ノスフェラスの名声を取り戻すため、日夜尽力する“青炎卿”――ゲルトルーデ・オディル・ペール・フォン・ノスフェラスであった。 ●物語の真相  マグナス卿は、冥王軍の“死の乙女”の甘言に惑わされ、意思を操られてしまっていた。  あえて冥王軍が目撃されたという話を流し、騎士を集め、陥れて殺す。  死の乙女に籠絡されたマグナスは、もはや彼の従者ですら、内心では敵と認識してしまっていた。  領主を惑わせた死の乙女の目的。  それは、冥王軍に仇なす騎士たちを討ち滅ぼすこと――ひいては、再び冥王討伐を志さんとする、ゲルトルーデ卿を抹殺するためだった。  人を惹きつけるカリスマ性こそあるが、性急で慎重さに欠けるゲルトルーデ卿のこと。  冥王軍が現れた、との噂が流れれば、即座に駆けつけるだろうが……まさか、その情報が全て冥王軍に仕組まれたものとは、露ほども知らぬことだろう。 ●注意  このシナリオは、常の幕におけるゲルトルーデ卿の状態によって、終の幕の内容が変化する。DRはゲルトルーデ卿の状態に注意すること。 ■NPC ●“青炎卿”――ゲルトルーデ・オディル・ペール・フォン・ノスフェラス  ルールブック137Pに記載の公式NPC。  美しく、天稟の実力を持つ騎士。ただし、騎士歴の短さ・若さゆえか、慎重さに欠ける性格。  かつて、冥王軍討伐を掲げた遠征――通称“遍歴遠征”を行ったが、失敗に終わってしまっている。  彼女はそれを悔やみ、再び遍歴遠征を行うため、各地を回って準備を始めている。 ●マグナス  フルネームは“マグナス・ボーモント・フォン・ドラク”。  本来は思慮深く、誰に対しても穏やかに接する親しみやすい騎士。武勲はあまりないものの、優れた統率力で高名である。  しかし、シナリオの開始時点から既に死の乙女に惑わされてしまっているため、冥王軍に仇なす騎士を討ち滅ぼすことしか考えていない。  おびき寄せた騎士たちを罠へと導くため、外面上は、元のままの親しみやすさを保っている。 ●死の乙女  データ・ビジュアルはルールブック260P、261Pを参照。  甘言により騎士すらも惑わしてしまう魔性を持つ、女型の冥王軍。  シナリオ開始時から、マグナスの意思を掌握している。  失敗にこそ終わったものの、前回のゲルトルーデ卿による“遍歴遠征”を重く捉えている。  ただし、同時にゲルトルーデ卿の慎重さに欠ける性質も掴んでおり、此度の搦め手を思いつく。 ■ハンドアウト ●PC1 消えざる絆:ゲルトルーデ(敬) 推奨の道:遍歴、狩人 貴卿は、冥王軍を討滅せんとするゲルトルーデ卿に、強く惹きつけられている。 彼女の志に感銘を受け、再び“遍歴遠征”へと発つときが来れば、自らもその一員に加わりたいと考えている。 そんな折、領主マグナスの治める土地に、冥王軍の一味が現れたという情報を聞きつけた。 ゲルトルーデ卿に会えるかもしれないという想いを胸に、貴卿はその地へと向かう。 ●PC2 消えざる絆:マグナス(信) 推奨の道:近衛、賢者 貴卿はマグナス卿に仕える騎士だ。 ある日貴卿は、マグナス卿から驚くべき情報を伝えられる。 なんと、彼の治めている地で、冥王軍の一味が目撃されたというのだ。 恩義あるマグナス卿からの直接の頼み、貴卿には断る理由がないだろう。 その話が本当であれば……必ず冥王軍を討ち滅ぼさなければ。 ●PC3 消えざる絆:ゲルトルーデ(友) 推奨の道:遍歴、夜獣 貴卿は、かつてゲルトルーデ卿とともに“遍歴遠征”に参加した騎士だ。 ゲルトルーデ卿とは離れ離れになってしまったが、貴卿は彼女に友情を感じている。 同時に、彼女の弱点……慎重さに欠けた性格も理解している。 そんな折、貴卿は、ゲルトルーデ卿が二度目の“遍歴遠征”を企図しているという噂を聞きつけた。 もし、ゲルトルーデ卿が、その性急さから誤った方向に進もうとするのなら、正してやるのも友というものだろう。 それとほぼ同じくして、冥王軍が、領主マグナスの治める地に現れたという情報を得る。 貴卿はゲルトルーデ卿の性格を知っている。おそらく彼女は、そこに現れることだろう。 ●PC4 消えざる絆:マグナス(友) 推奨の血統:領主、近衛 貴卿は領主マグナスと友人だ。 立場の違いはあるが、騎士同士、時折語らいあっては深い親交を築いていた。 思慮深く親しみやすいマグナスに対して、貴卿も信頼を置いている。 ある時、貴卿はその友人から、冥王軍の一味が現れた、という驚くべき情報を伝えられる。 窮状に手を貸さずして、何が友だろうか。 ■開演前  DRは4種類のハンドアウトを配布し、プレイヤーらに選択させる。  PCが2名以下であれば、「PC1」と「PC2」を優先的に選択させたほうが、ロールプレイを進めやすいだろう。 ---------------------------------------------------------------------------- ■序の幕  226ページの記述に従い、「序の幕」の項目を実行する。  PCの自己紹介は特に希望がなければ、ハンドアウトの順番やDRの左隣から時計回りなどで行うとよい。 ●状況説明  DRは「物語の背景」を読み上げる。 ●導入  DRは以下の導入を読み上げる。  貴卿らは、それぞれの動機から、領主マグナスの館へと集っている。  瀟洒で美しいはずの彼の館は、どこかほの暗く、陰鬱に見えた。  貴卿らを出迎えた領主マグナスも、自らに迫る脅威を気に病んでか、沈んだ表情をしている。 「よくぞ集まってくれました。騎士たちよ。○○(PC2)よ。友よ。そしてゲルトルーデ卿よ。  無力な私に代わって、どうかおぞましい冥王の軍勢を討ち滅ぼしてください」  ゲルトルーデ卿がそれに毅然と答える。 「マグナス卿。失われた誇りを取り戻す機会をいただき、感謝する。必ずや、私が討ち滅ぼしてみせよう」  ゲルトルーデ卿の凛とした声に、マグナス卿は力なく笑みを浮かべた。 「冥王軍が発見されたのは、東にあるハンドルフという廃村です。奴らを逃がさぬよう、裏の林道から回り込むといいでしょう」 ●詳細  マグナスの館は、広く、瀟洒な造りの美しい建物である。中庭もあり、手入れの行き届いた草花が瑞々しく咲いている。  しかし、優雅なはずの館は、どこか雰囲気が暗く、陰鬱に感じる。  PCたちから質問があれば、マグナス卿の口から、追加で状況を語らせてもよい。 ・冥王軍の一味を目撃したのは、東にある“ハンドルフ”という廃村である ・その数、戦力は不明である ・村の正面は開けた道だが、裏の林道は村から見えづらいため、そこからなら隠密に侵入ができる ・自分一人では心もとないため、騎士たちに討伐を依頼した  といっても、この時点でマグナスは死の乙女に意思を操られているため、PCたちに伝える情報は、場所以外は曖昧にして構わない。  PC2、PC4がいれば、冥王軍に対する心労のためか、普段からは考えられないほど気が落ちて沈んだ表情をしている、という描写をいれるのもよいだろう。 ■篇  このシナリオは〔戦の幕〕、〔常の幕〕の順に幕を開いてゆく。 ---------------------------------------------------------------------------- ■戦の幕  この幕では、廃村ハンドルフに向かう道中の林道で、突如現れた冥王軍に襲撃される場面が描かれる。 ●幕の諸元 ●脇役 死の騎士(P259)×2 存在点: PC2人の場合:各8点 PC3人の場合:各10点 PC4人の場合:各12点 行動値:参加PC数×8 行い:《髑髏の烈槍》《冥王軍、侵攻せよ》《冥王が領地なり!》《ここはすでに冥府》 壁の華:封印される ●端役 ゲルトルーデ・オディル・ペール・フォン・ノスフェラス 味方役 存在点:1 壁の華:戦意をくじかれる ●絆奏 マグナス:【怒】 ●場所 配置 玉座:森の奥/死の騎士×1 宮廷:森の入り口/ゲルトルーデ卿 庭園:林道/死の騎士×1 ●口上  DRは次の口上を読み上げる。  貴卿らは、領主マグナスに送りだされ、ゲルトルーデ卿とともに廃村ハンドルフへと向かった。  ゲルトルーデ卿は貴卿らと共に出発こそするが、一刻も早く冥王軍どもを討ち滅ぼさんという熱意に満ち足りている様子だ。  自然とその足取りは早くなる。  やがて、一行は廃村ハンドルフへ続く林道に足を踏み入れる。この道を往けば、ハンドルフの裏側へとたどり着くはずだ。  鬱蒼とした森の中を歩いていると、貴卿らは粘りつくような重い空気を感じる。  その刹那であった。  夜気を切り裂かんばかりに、刃が次々と貴卿らに降り注いだ。  それは禍々しい刃を持つ、騎士の槍であった。  その敵意に、瞬時に反応したゲルトルーデ卿は、雷光のごとく放たれる槍を、剣で次々と打ち払う。 「何とも醜い舞踏だな、騎士よ」  その姿を嘲笑うかのように――冥王軍の一味、死の騎士が、髑髏の槍を構えながら立ち塞がるのであった。 「マグナス卿の言った通り。騙されて、まんまと現れたな」 ●詳細  この幕では、想定外の場所で襲われたPCたちが、冥王軍の死の騎士を撃退することになる。  DRは諸元に従いNPCを配置し、全てのNPCの存在点を公開する。  その後、PCたちをそれぞれ「宮廷」もしくは「庭園」に配置してもらう。  戦の幕中、死の騎士たちに、この罠はマグナス卿によって仕組まれたものである、ということを示唆する台詞を言わせるとよいだろう。  戦の幕終了後、PCにヘルズガルド家の者がいれば、死の騎士たちを封印してもよい。  いなければ、後ほどヘルズガルド家当主が現れ、封印してくれることだろう。 ●ラウンド進行終了  2ラウンド終了、または死の騎士が全て「壁の華」となることでラウンド進行は終了する。 ●死の騎士のセリフ例 「マグナス卿もなかなか上手くやったものではないか」 「奴を信用して、何も考えずにやってくるとは」 「つくづく、騎士とは愚鈍な存在よ」 ●ゲルトルーデ卿のセリフ例 「どういうことだ。この林道は安全なはず。なぜ冥王軍がここに!?」 「マグナス卿が謀ったというのか? いや、そんなはずはない……!」 「迂闊! このような罠にかかるなど……」 ■幕間  幕間の処理を行い、次の幕へと以降する。 ---------------------------------------------------------------------------- ■常の幕  窮地に陥った一行。死の騎士たちが言っていたように、これはマグナス卿による罠なのか。  今後の行動を、PCたちが選択する場面が描かれる。 ●幕の諸元 ●脇役 ゲルトルーデ・オディル・ペール・フォン・ノスフェラス 存在点:参加PC数×4 行動値:参加PC数×10 行い:《不退転の覚悟》《曇りなき忠誠》《仁義伝える礼》《決意は揺るがず》(頑固者:256Pより) 壁の華:PCたちに説得され、マグナスに疑いの目を向ける ●絆奏 ゲルトルーデ:【友】 ●場所 配置 玉座:泉の畔/ゲルトルーデ卿 宮廷:獣道/なし 庭園:森/なし ●口上  DRは次の口上を読み上げる。  貴卿らは、死の騎士たちを退けた。ひとまず、廃村ハンドルフから離れた、泉の畔へ一時的に移動する。  すると、ゲルトルーデ卿が口を開いた。 「先ほど、死の騎士たちは、マグナス卿の名を出した。しかし、騎士が騎士を陥れるとは……ましてや、冥王軍と手を組むとは! そんなはずはない!」  ゲルトルーデ卿は、冥王軍への怒りを露わにした。 「きっと、何か事情があるに違いない……。私はそう考えている。○○卿(PC1、3)もそう思うだろう?  ○○卿(PC2、4)はどう思う? 貴卿(ら)は、マグナス卿をよく知っているのだろう?」  彼女は、正面から貴卿らに問いかける。 「貴卿らの意見を聞きたい。本当に、マグナス卿が私たちを罠にかけたのか?」 ●詳細  DRは諸元に従いNPCを配置し、全てのNPCの存在点を公開する。  その後、PCたちをそれぞれ「宮廷」もしくは「庭園」に配置してもらう。  この幕では、“マグナス卿は犯人ではない”と主張するゲルトルーデ卿に、従うか、もしくは反論するかどうか、PCたちに選択させる。  その結果、「終の幕」の展開が分かれることとなる。  ゲルトルーデ卿を壁の華にした場合、彼女はPCたちの言葉に論破され、マグナス卿に疑いの目を向けることとなる。  壁の華にせず2ラウンド終了した場合、ゲルトルーデ卿の主張(マグナス卿は犯人ではない)に従ったことになる。  DRは、以上の分岐条件をPCたちに説明すること。  PCたちが、最初からゲルトルーデ卿に従う意思を決めていた場合は、DRはPC同士でルージュを与え合うのを目的とさせるのがよいだろう。  ゲルトルーデ卿は、存在点を減らされた場合、PCたちにノワールを与えてくるだろう。  逆に、PCがゲルトルーデ卿に何もしてこない場合、自分の意見に賛同してくれるとみなし、PCたちにルージュを与えてくるだろう。 ●ゲルトルーデ卿のセリフ 「騎士は気高き存在だ。冥王軍に手を貸すことがあるものか!」 「何か事情があるのだ。想像もつかない何かが……」 「私たちを疑心暗鬼にさせるために、マグナス卿の名を出したのだろう!」 ●ラウンド進行終了  2ラウンド終了、またはゲルトルーデ卿が「壁の華」となることでラウンド進行は終了する。  その結果によって、後の終の幕が分岐する。  ゲルトルーデ卿が「壁の華」にならず、そのまま存在していれば「終の幕A」へ。  ゲルトルーデ卿が「壁の華」になったのであれば、「終の幕B」へ。 ■幕間  幕間の処理を行い、次の幕へと以降する。 ---------------------------------------------------------------------------- ■終の幕A  この幕では、ゲルトルーデ卿とともに、真相を探るためにマグナス卿の館へと戻る。  そして、此度の出来事が全て、マグナス卿を操っていた「死の乙女」の手によるものであると知ることになる。 ●幕の諸元 ●脇役 死の乙女(P260) 存在点:参加PC数×12 行動値:参加PC数×12 行い:《髑髏の烈槍》《魂貫く死槍》《死に焦がれの抱擁》《ここはすでに冥府》《汝、抗うなかれ》《夜天覆う漆黒の翼》《我が民は冥府に》《冥王が名の下に》 壁の華:封印される ●端役 死の乙女の従者×2 心なきもの 存在点:1 壁の華:消滅する ●端役 ゲルトルーデ・オディル・ペール・フォン・ノスフェラス 味方役 存在点:1 壁の華:戦意をくじかれる ●端役 マグナス・ボーモント・フォン・ドラク 心なきもの 存在点:1 壁の華:戦意をくじかれる ●絆奏 マグナス:【憐】 ●場所 配置 玉座:玄関2F/死の乙女×1 死の乙女の従者×2 宮廷:玄関ホール/ゲルトルーデ マグナス・ボーモント・フォン・ドラク 庭園:館の庭園/なし ●口上  DRは次の口上を読み上げる。 “マグナス卿は罠を仕掛けていない――”  ゲルトルーデ卿の主張に賛同した貴卿らは、真相を探るためにマグナスの館へと舞い戻った。  館の敷地内に入るや否や、ゲルトルーデ卿の表情が引き締まった。 「冥王軍の一味の気配がする……。つい先ほど来たときには分からなかった、邪悪な気配が……」  貴卿らは館の中に入った。  そこには、玄関ホールに意思なく棒立ちするマグナス卿と。  その隣に寄り添う、妖艶な女の姿があった。 「貴方たちがここまで帰ってくるということは……失敗しましたかぁ」  冥王軍の“死の乙女”は、そう言って陶然と微笑む。 「愚鈍で短絡的な騎士ですから、相応しい搦め手を用意しましたけどぉ……やはり、直接手を下すしかないようですねぇ」  その嘲るような言葉に、ゲルトルーデ卿が激高する。 「貴様……騎士を愚弄するか!」  死の乙女は、マグナス卿に寄り添って答える。 「愚鈍ですよぉ。このマグナス卿は、過去の想い人の幻覚を見せて囁いただけで、簡単に私たちに協力してくれましたからぁ。――ほら、マグナス卿? 最期の仕事ですよ。騎士を討ってくださいねぇ」  マグナス卿は意思の感じられぬ目で、死の乙女の命令通り、貴卿らへ向かい来る。 「く……こういうことだったか。マグナス卿を救わねば……!」  淫靡な殺意が、館の中に立ち込めてゆく。 ●詳細  DRは諸元に従いNPCを配置し、全てのNPCの存在点を公開する。  その後、PCたちをそれぞれ「宮廷」もしくは「庭園」に配置してもらう。  終の幕が始まる前に、PCたちが廃村ハンドルフへ向かいたいと言い出した場合は、採用して構わない。  ただし、ハンドルフへ向かっても、そこに冥王軍はおらず、もぬけの空である。  死の乙女はPCたちを優先して攻撃してくる。 ●死の乙女のセリフ 「最高の快楽を与えてあげましょう」 「邪魔な騎士は討たれてくださいねぇ」 「マグナス卿? 騎士たちはまだ生きていますよぉ」 ●ゲルトルーデ卿 「騎士を甘言で惑わすなど……許すわけにはいかない!」 「マグナス卿! あなたは惑わされているだけだ!」 ●ラウンド進行終了  死の乙女が「壁の華」となると、ラウンド進行は終了する。 ■幕間  幕間の処理を行い、後の幕へと以降する。 ---------------------------------------------------------------------------- ■終の幕B  この幕では、マグナス卿が犯人であると疑ったまま、彼の館へ戻る。  そして、マグナス卿と直接対峙し、彼を討つこととなる。 ●幕の諸元 ●脇役 マグナス・ボーモント・フォン・ドラク(堕落寸前:P257より) 存在点:参加PC数×12 行動値:参加PC数×12 行い:《縛られた誓い》《誰もが内に獣を》《卑血に濡れた黒刃》《あるまじき憧れ》《堕落へ至る病》《突然の来訪》《栄光の末路》《呪われた接吻》 壁の華:封印される ●端役 死の騎士 心なきもの 存在点:1 壁の華:封印される ●端役 ゲルトルーデ・オディル・ペール・フォン・ノスフェラス 味方役 存在点:1 壁の華:戦意をくじかれる ●絆奏 マグナス:【怒】 ●場所 配置 玉座:玄関2F/マグナス×1 死の騎士×2 宮廷:玄関ホール/ゲルトルーデ  庭園:館の庭園/死の騎士×2 ●口上  DRは次の口上を読み上げる。 “マグナス卿は罠を仕掛けていない”というゲルトルーデ卿の主張に、貴卿らは反論した。  マグナス卿を疑ったまま、貴卿らは館へと舞い戻った。 「マグナス卿! どこにいる!?」  ゲルトルーデ卿が高らかに叫びながら、館へとなだれ込んだ。  玄関ホールには、幽鬼の如き雰囲気で立つ、マグナス卿の姿があった。 「貴卿らがここまで帰ってくるということは、失敗しましたか……」  その声に、表情に、穏やかだったマグナス卿の面影はない。ただ、底冷えする残酷さだけがある。 「まさか、本当に貴卿が……!」  愕然とするゲルトルーデ卿。 「その通りです。短絡的と名高い“青炎卿”のこと、これで仕留められるかと思っていましたが……やはり、私が手を下さねばならないようですね」  マグナス卿が手を掲げると、貴卿らの背後に不気味な影が現れる。 「堕落してください――騎士よ」 ●詳細  DRは諸元に従いNPCを配置し、全てのNPCの存在点を公開する。  PCたちの配置が可能なのは、「宮廷」のみとなる。  マグナスはPCたちを優先して攻撃してくる。  マグナスは死の乙女に操られ、自分の意思を失っているが、PCたちからルージュを与えられると、一瞬だけ正気を取り戻す、といった演出を加えてもいいだろう。 ●マグナス卿のセリフ 「騎士は殺します。全ての騎士を」 「罠にかかって死ねば、よかったものを」 (正気が垣間見えて)「違う……こんなこと……私は……!」 ●ゲルトルーデ卿のセリフ 「本当に貴卿が……そんな、馬鹿な!」 「なぜ、こんなことに! なぜ、冥王軍と手を組む!」 ●ラウンド進行終了  マグナスが「壁の華」となると、ラウンド進行は終了する。 ■幕間  幕間の処理を行い、次の幕へと以降する。 ---------------------------------------------------------------------------- ■後の幕  PCの選択によって、いずれかの口上を読み上げること。 ●死の乙女を討った  死の乙女は力尽きた。  PCにヘルズガルド家の者がいれば、これを封印してもよい。  いなければ、後ほどヘルズガルド家当主が現れ、封印してくれることだろう。  マグナス卿は、死の乙女が討たれると錯乱状態に陥るが、貴卿らの呼びかけに、徐々に正気を取り戻してゆく。  長い時間のあと、ようやく落ち着いた彼は、今までの経緯を語り出した。  彼は先日、ハンドルフの近くを通りがかった際、冥王軍の一味に襲われた。その後、死の乙女に見せられた幻覚により惑わされ、意思を操られてしまった。  騎士たち、そして冥王軍討伐を計画するゲルトルーデ卿をおびき寄せるために、“冥王軍が目撃された”という情報を広めた。  そして、集まった騎士たちを、安全であると断言した林道に誘導し、罠にかかるよう仕向けた――。 「死の乙女が消えて……永い夢から覚めたようです……。私は、どうしてこのような真似をしてしまったのか……もはや、自分でもわかりません……」  マグナス卿は語った。  だが、惑わされていたとはいえ、全てマグナス卿の意思で行ったこと。  彼は、自らの行いを深く悔やむのであった。 ●マグナスを疑ったまま、彼を討った  マグナス卿は、騎士たちへの呪詛を吐きながら、完全に堕落し、力尽きる。  PCにヘルズガルド家の者がいれば、これを封印してもよい。  いなければ、後ほどヘルズガルド家当主が現れ、封印してくれることだろう。  しかし、あれほどまでに穏やかで思慮深かったマグナスが、なぜ堕落するに至ったか。  それは、貴卿らには謎のままだ。  マグナスの館は、今も不気味な空気に包まれている。 ●エピローグ  どの結末になろうと、協力して敵を討った仲間に対し、ゲルトルーデ卿は感謝の意を述べるだろう。  加えて、事の真相に気付き、マグナス卿の正気を取り戻した場合、ゲルトルーデ卿はPCたちの慧眼を称賛することだろう。  PC1、PC3が、ゲルトルーデ卿に“遍歴遠征”に参加したいと申し出れば、彼女は喜んでそれを了承する。  彼女は、PC2、PC4に対しても、“遍歴遠征”への参加を要請するかもしれない。貴卿らは、それに応じても拒んでもいい。  貴卿らのような強力な騎士が加わった次回の“遍歴遠征”は、必ずや成果を挙げることだろう。  マグナス卿が生存していた場合、彼は自らの行いを深く反省する。貴卿らとゲルトルーデ卿に、心からの詫びの言葉を述べるだろう。  PC2、4にその気があれば、マグナス卿から領地を受け取ってもよい。マグナス卿は贖罪のため、貴卿らに領主の地位を譲るだろう。  領主を退いたあと、マグナス卿は遍歴の道を往く。あるいは、夜獣になってしまうかもしれない。  彼の結末にPC側から提案があれば、それを採用してもよい。  マグナス卿が死亡していた場合、PC2、PC4は、この先どうするかを決めること。遍歴に出るもよし、マグナスに代わって新たな領主となるもよし。  マグナス卿が堕落した原因を調査する旅に出るのもよいだろう。