常夜国騎士譚RPG ドラクルージュ シナリオ 「今は届かぬ想いでも」 ◆シナリオ諸元 推奨プレイヤー:2〜4人 推奨逸話数:1 篇:1  このシナリオは、常夜国騎士譚RPGドラクルージュサプリメント『ヘレティカノワール』 のデータに対応している。  本文内における「基本」という記述は、常夜国騎士譚RPGドラクルージュ基本ルールブックを指す。また、「HN」という記述は、サプリメント『ヘレティカノワール』を指す。 ◆注意 ・このシナリオでは異端やそれにまつわる用語が登場するため、DRはサプリメント『ヘレティカ・ノワール』(以下、HN)を所持していることが望ましい。 ◆物語の背景  冥王領――旧ノスフェラス領に近しき忌まわし森。  この森には異端――半身が蛇であるメリュジーヌのケリドが住む庵がある。  彼女の庵は忌まわし森の奥地に建てられており、そこにはウルフリットという騎士が彼女の協力を得るため、身を寄せているという噂もあった。  この森に、騎士たちはとある目的で訪れることになる。  それはこの忌まわし森から時折、夜獣卿を思わせる雄叫びが聞こえるという噂が流れ始めたからだ。  夜獣卿が現れたならば封印する必要がある。  その居場所を、庵に住む彼らならば知っているかもしれない。  騎士たちは目的の庵にたどり着くと、木で出来た扉を叩く。  そして重々しく開かれた扉から出迎えたメリュジーヌの魔女――ケリドの目尻には、涙が浮かんでいた。 ◆物語の真相  忌まわし森から聞こえる雄叫びは、【渇き】に呻くウルフリットが発したものである。  ウルフリットは自らの悲願である“冥王”クローデッドの救出を果たすべく、力を求めていた。  されど冥王軍との戦いで覚え続けていた【渇き】による堕落を自覚しており、焦りを隠せなかった。  彼は魔女であるケリドに、自身を異端卿にして欲しいと懇願し続ける。  ケリドはウルフリットに恋心を抱き、どうにかしたいとは思っている。  だが、やがて消滅する運命を背負う異端卿にすることを拒み続けた。  それがウルフリットの【渇き】を加速させることになってしまう。  彼女は葛藤したが、それでも異端卿にすることは選べなかった。  ケリドはウルフリットを想うあまり、彼を喪うことが何よりも恐ろしいのだ。  これはケリドのエゴであるが、ウルフリットも力を、と己のエゴを押し付けている。  この二人の関係は、悲劇を生んでしまう。 ◆NPC ■“征伐卿”ウルフリット・フォン・ノスフェラス  性別:男性 叙勲年齢:32歳 騎士歴:1250年 【概要】  忌まわし森にある、メリュジーヌの魔女の庵に身を寄せている古き騎士。  全てを冥王軍との戦いに捧げており、クローデッドが“冥王”と呼ばれる以前のノスフェラス領を知る人物でもある。  また、異端であっても分け隔てずに接する寛容さも持つ。  PC1とは旧知の中であり、かつては冥王軍との戦いや冥王領近くに現れた堕落者封印などを共に行っていた。  魔女の庵には、ケリドの協力を得るために身を寄せている。 【真相】  ウルフリットは既に堕落寸前であり、その【渇き】は既にとどまることを知らない。  背中には蝙蝠の翼が現れてしまっており、完全なる堕落も近いだろう。  時折、一瞬だけだが夜獣卿の姿と重なって見えることさえ……。  彼はそれを自覚しており、ケリドの庵に身を寄せているのは覚悟と共に異端卿になるためだ。  全ては悲願である“冥王”クローデッドを救出するためであり、ケリドに幾度も再受勲を願い出ているが断られている。 ■“メリュジーヌの魔女”ケリド  性別;女性 外見年齢:10歳 活動年数:68年 【概要】  忌まわし森にある庵の主。  元々は冥王領近くに位置する村の少女であり、冥王軍の襲撃からウルフリットに救ってもらったことがある。  それをきっかけにケリドは彼に恋心を抱いたが、その数年後に異端となって村を出ることとなった。  魔女として活動していたことが縁を生み、ウルフリットが彼女の住む庵を訪れ、身を寄せることになる。  最初こそ喜ぶケリドであったが、現在では複雑な思いを抱いている。  PC2とはウルフリットが身を寄せる前から何度も交流したことがあり、信を置いている。 【真相】  ケリドの想いはとても深く、それ故に異端卿にすることを拒んでいる。  異端卿の寿命はおよそ14ヶ月と短く、その死の後には何も残らない。  彼女にとって、それは認めることの出来ないことだった。  されど完全なる堕落を許すわけにもいかず、選べない自分に深い葛藤を抱いている。  また、ケリドは具体的にウルフリットを救う手段を、異端卿として再受勲させる意外に知らない。 ◆ハンドアウト  PC1とPC2は、プレイヤーがヘレティカノワールを所持している場合、異端のPCを使用してもよい。  その際は、「貴卿」の記述を「御身」に変えて使用すること。 ■PC1  消えざる絆:ウルフリット【信か敬】  騎士における推奨の道:遍歴、狩人  異端における推奨の血統:カルンシュタイン、ストリガ ・序言  貴卿はかつて、ウルフリット卿と共に行動していたことがある。  “冥王”を救うという悲願のもと、長い年月を冥王軍との戦いに費やしてきた騎士である彼に貴卿は憧れていた。  貴卿は今でもウルフリット卿と同じように、冥王軍や堕落者を相手取る日々を送っている。  そんな中、忌まわし森に夜獣卿が現れたという噂を聞いた。  忌まわし森にはウルフリット卿が身を寄せているという、異端の庵がある。  貴卿は彼の騎士やそこに住まう異端が何か知らないかと思い、忌まわし森へと向けて出立した。 ■PC2  消えざる絆:ケリド【友か憐】  騎士における推奨の道:夜獣、賢者  異端における推奨の血統:グルマルキン、メリュジーヌ ・序言  貴卿はかつて、忌まわし森に訪れそこに住まう異端――ケリドの世話になったことがある。  貴卿にとってケリドの魔法や魔女としての知識は新鮮なものばかりで、何度も足を運んでいた。  最近は彼女が過去に話していた想い人、ウルフリット卿が身を寄せ始めたというのを聞いて遠慮しているが……。  思い立ち、ケリドに会いに行こうかと考えたのは虫の知らせか。  貴卿は忌まわし森に夜獣卿が現れたという噂を聞く。  万が一があったならばと心配になった貴卿は、急ぎ忌まわし森の奥地へと向かうことにした。 ■PC3【騎士限定】  消えざる絆:PC1【欲か友】  騎士における推奨の道:狩人、近衛 ・序言  貴卿はPC1の友であり、かつてウルフリットと志を共にした間柄である。  背を預け合い、助け合い、そして【潤い】をもたらし合ったあの日々は今でも忘れられない。  だが、そんな貴卿の頭を悩ませる出来事が起こっていた。  貴卿が居る領地に近しい忌まわし森から時折、夜獣卿の雄叫びが聞こえるという噂が民からもたらされたのだ。  それが真実であるならば、放っておくわけにはいかない。  貴卿は忌まわしの森に向かうというPC1と共に、領地から出立する。 ■PC4【指定なし】  消えざる絆:PC2【侮か信】  推奨:なし ・序言  貴卿はPC2と行動を共にしている。  かつては様々な土地を転々とする日々であったが、今では落ち着いたものだ。  貴卿がPC2と出会ったのは、PC2がケリドの住む庵に行くのを遠慮し始めた頃である。  気立ての良い魔女が居る。そんな話をよく聞かされた貴卿は、PC2に何を思っているのだろうか。  ともあれ、今日も何をしようかと考えていた時だった。  PC2から急ぎ忌まわし森へと向かうと言われた時、貴卿は自然と共に向かうと答えた。 =====【セッションの手引き】===== ◆開演前 ■序の幕  基本ルールブック223ページの手順に従って、「開演前」の項目を行う。  DRは4種類のハンドアウトから、PLらにハンドアウトを選択してもらう。  PCが3名以下なら、必ず「ハンドアウト:PC1」と「ハンドアウト:PC2」が選択されるようにすること。PLが2人なら、「ハンドアウト:PC3」と「ハンドアウト:PC4」は提示しなくてもよい。  PCの自己紹介は特に希望がなければ、ハンドアウトの順番で行うのがよいだろう。 ●状況説明  DRは「物語の背景」を読み上げるとよいだろう。必要に応じて、専門用語や世界観などの補足を入れること。 ---------------------------------------------------------------------------- ●篇  このシナリオでは、〔常の幕〕〔戦の幕〕のうち、まず〔常の幕〕が発生する。 ■常の幕  この幕では、騎士たちが庵に迎え入れられるところから始まる。PCたちはこの場面に辿り着くまでに合流していたことにしてもよい。PLから希望があれば、別々に辿りついてもかまわないが、かならず全員が登場するよう注意すること。 ●幕の諸元 ・NPC種別 〔端役〕使い魔(味方役/基本264ページ) 〔脇役〕ケリド(助言者/基本255ページ) ・NPC配置 【庭園:なし/宮廷:使い魔×2/玉座:ケリド】 存在点 ケリド:〔参加PC数+2〕点 行動値 ケリド:〔参加PC数×8〕 [壁の華] ケリド:「……準備がよろしければ、ウルフリット様のもとへご案内、します」と口にして、庵の地下へと続く階段へ騎士たちを案内する。 使い魔:自分の宿り木へと戻り、大人しくなる。 場所 庭園:リビングの出入口 宮廷:テーブル席の出入り口側 玉座:テーブル席の窓側 絆奏 ウルフリット:【任意】 ●口上  DRは次の口上を読み上げる。 「先ほどはお目汚し、失礼いたしました」  そう言ったケリドに庵のリビングへと案内された貴卿らは、促されるままテーブル席に着く。  ケリドは二羽の梟(ルビ:ふくろう)の使い魔に命じると、手際よく貴卿らに紅茶を振舞った。  彼女の表情は笑顔に変わっているが、目元に残った涙の跡が目立っている。  心地よい紅茶の香りが充満する中、それでもどこか空気が重い。  それもすっかりと口を閉ざしているケリドが原因だろう。この庵に身を寄せているという、ウルフリットの姿もない。  そんな中で、彼女は意を決するように息を飲んでから小さな唇を開く。 「騎士様。……どうか、ウルフリット様を助けてください」 ●詳細  この幕では DRは諸元に従いNPCを配置し、全てのNPCの【存在点】を公開する。  その後、PCたちをそれぞれ「宮廷」もしくは「玉座」に配置してもらう。  この幕では助けを求めるケリドとの会話や、PC同士での交流を行う。  全てのキャラクターの配置が終われば、DRは基本ルールブック236ページの手順に従い、[常の幕]のラウンド進行を開始する。  全PCは絆奏として、「ウルフリット:【任意】」を得る。これはルージュとノワールのどちらを得るかも、各プレイヤーが選択してよい。  ケリドが[壁の華]になっても、幕の終了までPCは互いを対象として常の幕を続けて構わない。  2ラウンド目終了時、ケリドがPCたちをリビングの端、棚をスライドさせた先にある地下に続く階段へと案内する。 ・ケリドについて  ケリドは下半身が赤い鱗に覆われたヘビになっているメリュジーヌの魔女であり、上半身は幼い少女の姿をしている。  彼女はウルフリットの現状を語ろうとする時、PC2の方へと視線を送りながら躊躇うような様子を見せる。  ノワールが与えられた場合、そのPCに恐怖を覚えて怯えながら語るだろう。逆に、ルージュだった場合は真剣な表情になってポツリポツリと語り始める。 ・使い魔について  ケリドが使役している二羽の梟であり、頭が良く様々な手伝いなどが出来る。  時折、騎士の肩に乗っては愛嬌を振りまくだろう。夜獣や異端PCが相手でも気になった相手には近づいていく。 ●ケリドの情報について  ケリドは次の情報を持っている。PCの「行い」や演出に応じて適切な情報を与えること。  ケリドの口調などは、変更してもかまわない。 ・ウルフリットの行方について 「ウルフリット様は、やむを得ぬ状態のため……この庵の地下に、お隠れになっています」 ・ウルフリットの状態について 「ウルフリット様は現在……堕落する寸前になるまで【渇き】を……。背中に、蝙蝠の翼まで……! 私はなにも、できません、でした……!」 ・ケリドに出来ること 「最後の手段は、私の再受勲による……異端卿にすること、でしょう」 「ですがそれを、私は……選べません。ウルフリット様は、それをお望みですが……」 ・ウルフリットの望みについて 「……堕落する前に、異端卿になること、だと」 「冥王領に赴き、“冥王”を救い出すために……」 ・ケリドの願い 「私は、ウルフリット様が好きです。愛しています」 「だから、だからこそ、堕落者になってしまうなんて嫌! でも、異端卿にしてしまったら……!」 ・ケリドの懇願 「私だけでは、駄目、でした。悔しいですが、悲しいですが、それが現実で……」 「だから、お願いします。ウルフリット様を、どうか助けてください!」 ■幕間  幕間の処理を行い、次の幕へと以降する。 ---------------------------------------------------------------------------- ■戦の幕  この幕では、頑なに異端卿になろうとするウルフリットと相対する場面が描かれる。 ●諸元 NPC種別 〔端役〕ケリド(味方役/基本264ページを参照) 〔脇役〕ウルフリット(頑固者/基本256ページを参照) NPC配置 【庭園:ケリド/宮廷:なし/玉座:ウルフリット】 存在点 ウルフリット:〔参加PC数×4〕点 行動値 ウルフリット:〔参加PC数×10〕 [壁の華] ウルフリット:一度膝を着くが、鋭い眼光と共に具現化した双剣を杖に立ち上がる。 ケリド:涙を流しながらその場に崩れ落ち、動けなくなる。 場所 庭園:階段付近 宮廷:中間地点 玉座:奥の壁際 絆奏 ウルフリット:【任意】 ●口上  DRは次の口上を読み上げる。  ケリドの案内で連れられた庵の地下室は、決して広いとは言えなかった。  何かを作るための空間のようだが、作成用の道具などは見受けられない。  その代わりに、奥の壁際にはひとりの騎士が居た。  背中に隠しきれぬほど大きな蝙蝠の翼を持ち、射抜くような眼光で貴卿らを見やる騎士。  “征伐卿”ウルフリット・フォン・ノスフェラスは、ゆっくりと立ち上がる。 「ケリド。僕はこれ以上、待つことなど出来ない」  そう言った彼の騎士は、両手に一対の剣を具現化する。 「――僕は、このまま堕落者になるわけにはいかないのだ」  ウルフリット卿の声には、悲痛と覚悟が入り混じっていた。 ●詳細  DRは諸元に従いNPCを配置し、全てのNPCの存在点を公開する。  その後、PCたちをそれぞれ「宮廷」もしくは「玉座」に配置してもらう。  この幕において場所は距離を表すため、情景描写を分ける必要はない。  全てのキャラクターの配置が終われば、DRは[戦の幕]のラウンド進行を開始する。  2ラウンド目終了時、または『ウルフリット』の存在点が0点になった場合、次の幕に移行すること。 ・ウルフリットについて  ウルフリットは【渇き】に苛(ルビ:さいな)まれるあまり、理性的な判断が取れずにいる。  自らの堕落は自覚しているが、それでもなお異端卿へとなるためにケリドに詰め寄る。  ウルフリットはPC1を見ると、ひどく辛そうな表情を浮かべる。だが、それを跳ね除けてでもウルフリットはケリドに自身を再受勲するよう叫ぶ。  異端卿になってでも、“冥王”クローデッドを救う。それが彼という騎士にとっての悲願なのだ。  また、ウルフリットはノワールで[壁の華]になった時、新たに覚えた【渇き】によって発作的な変身を起こし一瞬だけ夜獣卿の姿になって雄叫びをあげる。  すぐに元の姿に戻るが、最早手段は選ばないと呟き、立ち上がる。  ルージュで[壁の華]になった場合、発作的な変身は起きない。 ・ケリドについて  この地下室は元々、ケリドが魔女として活動するために作った工房である。  ケリドは現在、この工房をウルフリットを匿う場所にしている。  ケリドはウルフリットと戦うことを望まず、PCたちに落ち着いて話し合いをするように語りかけるだろう。 ●ウルフリットの情報について  ウルフリットは次の情報を持っている。PCの「行い」や演出に応じて適切な情報を与えること。  また、ウルフリットの最初の手番か、ウルフリットが〔壁の華〕になった場合にも情報を公開すること。  ウルフリットの口調などは、変更してもかまわない。 ・クローデッド公への誓い 「(PC1を見て)貴卿(または御身)にこのような姿を見られたくはなかったのだがね。まさか、このような場所で会うとは……」 「(PC1の名前、騎士なら+卿)。貴卿(または御身)も知る通り、僕はクローデッド公を救うのが悲願だ。そのために、僕は異端卿になる」 ・ウルフリットの悲願 「僕はこのままだと、近く堕落者になるだろう。ならばせめて、最後まで悲願成就のために戦いたい。それをどうか、わかって欲しい」 (ノワールを与えられた)「あ、がぁッ!(この時、一瞬だけ夜獣卿の姿に変身する)……僕の邪魔を、しないでくれ。僕は、騎士として、最後まであの方のために戦いたいんだ」 (ルージュを与えられた)「すまない。それでも僕は、悲願を果たしたいんだ」 ・ケリドの思いをPCから知らされた場合 「……知っているさ。それでも、僕は止まれないんだ。ずっと、そのために戦い続けてきたから」 「勝手なのは承知の上だ。だが、堕落者になって誰かを傷付けるくらいなら――僕は、異端卿として戦い抜いて、跡形もなく消え去ることを選ぼう」 ●ケリドのセリフ 「ウルフリット様を、止めてください……!」「嫌です! 私は、異端卿となって消えて逝く者を、見たくない!」「(PC2を見て)騎士(異端の場合はPC2の名前)様、どうか、あの方を……あの方を、お救いください……!」 ■幕間  幕間の処理を行い、次の幕へと以降する。 ---------------------------------------------------------------------------- ■終の幕  この幕では、ウルフリットとの決戦の場面が描かれる。 ●諸元 NPC種別 〔端役〕ケリド(味方役/基本264ページを参照) 〔脇役〕ウルフリット(堕落寸前/基本257ページを参照) NPC配置 【庭園:ケリド/宮廷:なし/玉座:ウルフリット】 存在点 ウルフリット:〔参加PC数×4〕点 行動値 ウルフリット:〔参加PC数×10〕 [壁の華] ウルフリット:その場で膝を付き、動かなくなる。 ケリド:PCからであれば、涙を流しながら被害のないように身を隠す。NPCからであれば、その場に崩れ落ち動けなくなる。 場所 庭園:階段付近 宮廷:中間地点 玉座:奥の壁際 絆奏 ウルフリット:【任意】 ●口上  DRは次の口上を読み上げる。 「僕はどのような形になろうとも、悲願を果たす……」  ウルフリットは、背に現れている蝙蝠の翼を大きく広げながら呟く。  双剣を杖に立ち上がった彼の皮膚はひび割れ始め、その中からじわりと紅い光が漏れ出す。  それが全身に回った時、ウルフリットは貴卿らに向けて声を荒らげた。 「最早、手段など選ばない。ケリドを渡してもらおうか……!」  不徳であろうとも、認められない行いであろうとも、ウルフリットは異端卿となって悲願を果たすため、貴卿らと相対する。 「我が名は“征伐卿”ウルフリット・フォン・ノスフェラス。誇り高き、ノスフェラスの騎士である!」  名乗りと同時に、ウルフリットが双剣を構える。  堕落寸前の騎士は、瞳に覚悟を宿し輝かせた。  剣を取れ、騎士たちよ。眼前に立つ男と語らうならば。  今が――その最後の機会である。 ●詳細  DRは諸元に従いNPCを配置し、全てのNPCの存在点を公開する。  その後、PCたちをそれぞれ「宮廷」もしくは「玉座」に配置してもらう。  全てのキャラクターの配置が終われば、DRは基本ルールブック236ページの手順に従い、[終の幕]のラウンド進行を開始する。 ・注意  この幕ではウルフリットを[壁の華]にしても、封印しないことを選んでも良い。   ・ウルフリットについて  完全なる堕落を目前としているが、最後の力を振り絞ってPCたちと戦う。  ウルフリットの現在の目的はケリドに無理やり再受勲を行わせることであり、そのためならば不徳さえいとわない。  それだけの覚悟で、この戦いに臨んでいるということだ。   ・ケリドについて  ウルフリットの姿勢に、自らの答えを出そうとしている。彼の覚悟を受け入れるか、それとも受け入れないか。PCたちの演出やRPでケリドはその答えをこの幕で得るだろう。 ●ウルフリットのセリフ 「僕は、かつてのノスフェラスを取り戻したい。例え僕がその場に居らずとも、クローデッド公さえ居れば、きっと……!」 「僕の悲願の邪魔をするな、若造どもォッ!」 (PC1に対して) 「……貴卿(または御身)なら、僕の気持ちがわかってくれると思ったんですがね。これもまた、運命というものですか」 ●ケリドのセリフ 「私は、それでも……!」 「嫌です。そんなの、嫌なんです。堕落になんて負けないでください、ウルフリット様!!」 ●ラウンド進行終了  ウルフリットが[壁の華]になると、ラウンド進行は終了する。 ■幕間  幕間の処理を行い、次の幕へと以降する。 ---------------------------------------------------------------------------- ■後の幕  PCの選択にあわせて、エピローグを語る。  このシナリオでは、全滅以外に三つの選択肢がある。 ・ウルフリットを封印する。 ・ウルフリットを封印せず、【渇き】を癒す。 ・ウルフリットを異端卿にする。 ●PCが全滅した  ウルフリットはケリドに無理やり再受勲を行わせ、異端卿となった彼の騎士により完全なる堕落をした貴卿らは討たれる。  お疲れさまでした。 ●ウルフリットを封印する場合  不徳の騎士としてウルフリットを封印する際、彼の騎士は諦めたようにため息を吐く。  そしてウルフリットはPC1に対して「いつか、クローデッド公を」と短く頼むだろう。その答えを聞いたあと、彼の騎士は地獄へと自発的に向かう。 ●ウルフリットを封印しない場合  HNには【潤い】を使い他者の【渇き】を減少させることの出来るルールがある(HN229ページを参照)。  これによってウルフリットの【渇き】を4点分減らした場合、ウルフリットは完全なる堕落をせずとも済むようになる。  ケリドは奇跡だと泣いて喜び、ウルフリットもまた貴卿らに深い感謝と恩を抱くだろう。  また、PC1にこれからまた共に冥王軍と戦って欲しいと頼む。これを断ったとしても、ウルフリットは残念そうにするが異論を挟むことはない。 ●ウルフリットを異端卿にする場合  完全なる堕落を目前に控えたウルフリットの覚悟を、ケリドは貴卿らに背中を押され受け入れた。  貴卿らはケリドの頼みにより、先に庵のリビングへと戻ることになる。  しばらくして異端卿となったウルフリットと、その腕に抱えられたケリドが階段を上がってくるのを見る。  その日からウルフリットは悲願を達成するため、不眠不休で冥王領に入り戦い続けるだろう。  命の炎が完全に燃え尽きる、その日まで。  ●騎士たちのその後  それぞれのその後を決めること。  特にPC1については、ウルフリットを封印していなかった場合、その後は彼と行動を共にするかもしれない。   ■終演後の処理  DRは基本ルールブック230ページの手順に従い、終演後の処理を行う。