シナリオ「カルモルテの酔夢」 ■シナリオ諸元 推奨プレイヤー人数:2〜4人 推奨PC逸話数:1つ 篇:1 味方となる脇役:ゴブリン ****** ■物語の概要 ●物語の背景  それぞれの理由からドラク領北東の小村カルモルテに、珍しくも複数の騎士が訪れた。彼らはそれぞれがダストハイムの始祖セイズマリー公と、小さき妖精らに縁を持つ者らである。  予期せぬ複数の騎士の来訪。  村人たちは喜び、彼らに最大限の贅を尽くした宴を捧げる。  そして宴の中、一部の騎士はテーブルの下でくすねた料理を食べる小鬼――ゴブリンたちの姿を見るのだった。 ●物語の真相  PC2とPC3は、ゴブリンに好かれている。彼らに近しくあり、敬意を捧げられる騎士には、ゴブリンたちもまた好かれようとするだろう。  そして、PC1とPC4は、セイズマリー公に逢いたく思っている。  全ては妖精たちの悪戯だ。  ゴブリンはPC1、PC4のためにセイズマリー公の持つ禁忌の書『常夜年代記(とこよのねんだいき)』を盗み出してきてしまう。これは常夜国の騎士ら全てに関わる重大な秘密が書き記された書だ。  PCらが書をどのように扱おうと、書の秘密を守るべく永劫の誓いを立てた騎士……秘匿卿を呼び出してしまう。  また、さらには始祖たる“書斎公”セイズマリー公本人すらも現れるだろう。 ●注意  このシナリオを使うにあたり、以下に注意すること。 ・PC同士の「消えざる絆」はルージュに属するものとせよ。 ・各PCの『原風景』と「カルモルテの村」を結びつける場合、慎重に行うべきだ。自信があるなら、DRはPCの原風景とこの村を結び付け、叙勲前の騎士を知る人物などを登場させてもいいだろう。ただし、このシナリオの軸は村人ではないため、基本的には各PCの原風景とは無関係としてよい。 ・PCに「領主」がいるなら、舞台となる「カルモルテ」はその領地となる。領主のPCは望むなら、村の名をそのPCの姓と同じにものに変更するか、自身の姓を「カルモルテ」にしてもよい。 ・このシナリオでは最初の幕で潤いや喝采点を多く得られる代わり、敵としての脇役は強力になっている。最初の幕で積極的にルージュを与え合うよう、勧めよう。セッションに用いられる時間が限られる場合、脇役らの存在点をより低く設定してもよい。 ・このシナリオはPCの行動によって途中で展開が分岐する。〔常の幕〕が終わった時、PCがどのような行動を取るか、DRは注意せよ。 ■NPC ●ゴブリン  全てのトラブルの元となる妖精。基本的にルールブックP265のイラストのように、3体で一組となって行動している。DRは状況に合わせて、演出としてさらに多数のゴブリンを登場させてもよい。各ゴブリンたちは身長15p程度。騎士の掌の上に十分乗る重さだ。ゴブリンはフードをかぶった黒い影そのもののようであり、影から影へと自在に移動する。彼らは小さな体でちょこちょこと歩き、その体の大きさからは信じられないほどのジャンプをする。これは最大で大人の胸あたりまで届くものだ。こうした仕草を交え、マスコットキャラクターのように扱うといいだろう。  ゴブリンたちはその外見以上に油断ならぬ存在である。無邪気かつ残酷な彼らに好かれれば、思わぬ幸運と悲劇が同時に訪れるだろう。その善意からの“おせっかい”は大きな混乱を巻き起こす。この物語のように。 ●秘匿卿  ダストハイム当主の書庫奥深くに隠された禁書の秘密を守るべく、己自身を犠牲に書を封印する騎士たち。セイズマリー公その人に叙勲を受けた騎士としか知られておらず、その個別の名を知るのも彼の始祖のみ。他の血統はおろか、ダストハイム騎士らにとっても、半ば伝説上の存在である。  その姿は黒い全身甲冑のみであり、目のみが甲冑の中で異様な炎のように赤く光り揺らめいている。もはやまっとうな騎士とは思えぬ存在ながら、対峙すれば彼が気高き騎士であり、堕落者などでないと感じ取れるだろう。彼らの言葉は断固たる意志と共にあり、その礼節は騎士として敬意に値するものだ。その武勇も見事なものだが、書物に縛られた彼らは、長時間を現実の中では過ごせぬらしい。  秘匿卿は、始祖以外の者が『常夜年代記』のページを手繰れば、たちまちに現れその者を討たんとするという。彼は心を持ち、言葉も話す存在だが、『常夜年代記』を開いたり、セイズマリー公を害さんとした騎士らには一切の容赦をしない。  DRは彼らのデータを望むなら「頑固者」(P256)に変えてもよい。 ●セイズマリー公  ダストハイム当主。未だ唯一君臨する始祖の一人。  詳細はルールブックP135を参照。 ■ハンドアウト ●PC1 消えざる絆:セイズマリー(恋) 推奨の道:近衛、遍歴 貴卿は主に付き従い、向かったダストハイムの地で一目見た始祖たるセイズマリー公に心奪われた。 その時は気の迷いと思い、主と共にこのドラクの地へと帰って来たが……。 一年、二年と過ぎる中でその想いは高まり、未だ消えない。 長い気の迷いを経て、ようやく気づき、自覚した。 貴卿はセイズマリー公に恋をしているのだ。 もはやこの想いは偽れない。 今いるドラクの地を離れ、ダストハイムに向かうべきやもしれぬ。 ●PC2 消えざる絆:ゴブリン(友) 推奨の道:遍歴、狩人 貴卿には叙勲前からずっと、小さな友がいる。 彼らゴブリンは常に物陰から時にはからかい、また時には助けてくれる。 多くの騎士は、彼らに出会ったことがないらしい。 残念なことだ。 騎士として長い時を歩もうとも、彼らはきっと共にいてくれる。 そんな想いがあればこそ、貴卿は誰よりも優しく、前を向き、進み続けられるのだ。 そして今夜も貴卿は、彼らのためにミルクと焼き菓子を用意する。 ●PC3 消えざる絆:ゴブリン(信) 推奨の血統:領主、遍歴 ある村にあって、貴卿は恐るべきトロールを討伐した。 未だ広き名声とはなっていないかもしれないが……輝かしき栄光と数えてよい。 民は貴卿を讃え、宴を催してくれた。 しかし、この功績は貴卿だけのものではない。 ゴブリンたちという、小さな協力者あってこその討伐であった。 彼らは今も、テーブルの影で料理をかすめとり、食べている。 貴卿は厳粛なる騎士だが、今は小さき罪を見逃してもよかろう。 ●PC4 消えざる絆:セイズマリー(主) 推奨の血統:賢者、夜獣 貴卿はかつてダストハイムに仕えていた。 しかし、始祖セイズマリー公への失態により彼の地を離れた。 PC1の帰途に合わせ、逃げるが如くドラクの地へと落ち延びたのだ。 幸いにも、始祖の怒りは薄かったのだろう。彼女の追及はない。 しかし、できるならば、彼の地へと戻りたい。 そして、セイズマリー公の前に跪き、かつての失態を詫びたい。 たとえ彼女がそのような些末事を忘れていようとも。 ■開演前  223ページの記述に従い、「開演前」の項目を実行する。  DRは4種類のハンドアウトを配布し、PLらに選択させる。  PCが3名以下なら、必ず「ハンドアウト:PC1」と「ハンドアウト:PC2」を選択させること。PLが2人なら、「ハンドアウト:PC3」と「ハンドアウト:PC4」は提示しなくてもよい。 ■序の幕  226ページの記述に従い、「序の幕」の項目を実行する。  PCの自己紹介は特に希望がなければ、ハンドアウトの順番やDRの左隣から時計回りなどで行うとよい。 ●状況説明  DRは「物語の背景」を読み上げるとよいだろう。必要に応じて、専門用語や世界観などの補足を入れること。  また、各ハンドアウトに応じて以下のような演出を入れてもよい。 PC1:領主以外なら、この騎士は今までのドラクでの立場を捨て、セイズマリー公に逢うべくダストハイムへと向かう途中だ。 PC2:ゴブリンに導かれ、この騎士はカルモルテにやって来た。他の騎士とは初対面でもよいし、かつてからの友としてもよい。 PC3:村を脅やかすトロールを討伐した英雄だ。村の宴の中心はこのPCである。ただし、このハンドアウトを選ぶPCがいなければ、宴はPCらを歓迎するものとなる。 PC4:領主以外なら、この騎士はPC1と同様ダストハイムに向かう旅の途中だ。同意があれば、PC1の同行者とすべきだろう。  これらはPCが選んだ「道」や「名声」「経歴」などによっても変わる。なるべくPLが決めた設定やアイデアを尊重するとよい。特に思いつかないようなら、DRが決めてもよい。 ■篇  このシナリオは〔常の幕〕、〔戦の幕〕の順に幕を開いてゆく。 ■常の幕  この幕では、カルモルテにある酒場で、騎士らが村人に歓待を受けている。テーブルの下ではゴブリンらも、宴のおこぼれにあずかっているようだ。 ●幕の諸元 NPC種別 〔端役〕村人(喝采役/P264) 〔脇役〕ゴブリン(P262) NPC配置 庭園:ゴブリン/宮廷:村人×1/玉座:なし 存在点 ゴブリン:〔参加PC数×8〕点 行動値 ゴブリン:〔参加PC数×12〕 壁の華 村人:酔いつぶれるか、各自の家に帰宅する ゴブリン:一斉に逃げて姿は見えなくなる 絆奏 ゴブリン:【友】 ●口上  DRは次の口上を読み上げる。 ◆◆◆◆以下、空白改行までフォント変更  貴卿らはそれぞれの理由により、この夜、このカルモルテの村に訪れた。  一人の遍歴が訪れる日、領主が視察に訪れる日はあれども。  かくも麗しき騎士らが揃う機会など、カルモルテでは稀なこと。  複数の騎士の来訪に、村人らは喜び歓待の宴を開いてくれている。  宴の中、騎士らは見事なる武勲を語り。またその優雅なる振る舞い、美しき姿に、数多の民を虜とする。  村の名産と言う葡萄酒の樽が封切られ、貴卿らの具現化した杯は休まず満たされよう。  〇〇卿(PC2、PC3の名)の友たるゴブリンらも、宴のテーブルの下でおこぼれにあずかっている。村人の中にも彼らに気づいた者らがいるようだが、小さく笑って見て見ぬふりだ。  村人らは次の日のことも忘れ、葡萄酒と騎士らの姿に酔う。  そんな中、〇〇卿(PC2、PC3の名)はゴブリンたちがちょこちょこと歩いて酒場の外に出るのを見た。  どうも嫌な予感がする。 ●詳細  この幕において「宮廷」は酒場を示す。「玉座」は酒場の二階に当たる宿だが、通常はまず使われまい。「庭園」は宿屋の前、村の広場である。  ゴブリンが酒場(宮廷)から広場(庭園)へと移動したところから、PCの配置と処理を行う。  PC1、PC4はゴブリンらの存在に気づけない。PC2やPC3が教えるか、あるいは自ら「庭園」に移動した時気づく。もっとも、PCが気づきたいと宣言したり、アヴァロームの騎士ならば気づいたとしてもよい。ゴブリンの存在を知らなくても、ただ外の風に当たるため……などと称して「庭園」に配置してもまったく問題はない。  宮廷に配置されたPCは、酒場で村人たちを魅了し、武勲を語って喝采を浴びる。村人らは騎士たちが全て「庭園」に出れば、扉越しに外を見て「宮廷」から妖精と戯れる騎士らを褒めそやすだろう。  庭園に配置されたPCは、ゴブリンらに囲まれ、じゃれつかれる。彼らに敵意はなく友好的で、あくまで騎士と遊びたいだけに見える。  PCの目的はおおまかには、次の二つである。 ・ゴブリンと交流して【存在点】を0にする(ルージュによるものが好ましい)。 ・他のPCと交流して【潤い】を得る。  ゴブリンたちは最初の自身のターンにおいて、PC1かPC4に《小鬼の贈り物》を使用する。これはPCに有利なもののため、基本的に〔抗い判定〕の対象とされないだろうが……念のために高めの行動値を割り振った方がよい。対象となるPC2かPC4が「庭園」にいなければ、ゴブリンは「宮廷」に移動する。  この《小鬼の贈り物》の演出は以下のように行う。そのまま読み上げてもよい。 ◆◆◆◆以下、空白改行までフォント変更  物陰からさらに別のゴブリンたちが現れる。  彼らは何やら大きな本を、神輿のように担いでいるようだ。  『常夜年代記(とこよのねんだいき)』と記されたその本は、ゴブリンたちにはいかにも不似合いに見える。  彼らはそれを〇〇卿(PC1か4)の前に置いた。 「アゲルー」 「オクリモノー」  そう言ってゴブリンたちはまた、〇〇卿(PC2かPC3)の周りで遊んでいる。  この『常夜年代記』についてゴブリンに聞いても、何ら答えは得られない。  本を開けば最初のページには以下の文章が記されている。 ◆◆◆◆以下、空白改行までフォント変更 『これなる書、我ら始祖のみ閲覧を許すものなり。  愚かにもこの先を読みたる者、常夜国に在るを許さず。             ――セイズマリー・ドラクル・ダストハイム』  この本を読み進めようとするか、読むのをやめて閉じるか。  PCらが2ラウンド目にどうするかによって、次の幕は変わる。  本を読み進めようとしたなら、その内容に触れるのは次の幕となる……として読んだPCのターンを終了させるとよい。この幕では、『常夜年代記』の詳細は不明のままとなる。  彼の書にどう対応し、その結果何が起きるか……が、次の幕の詳細となるのだ。  PCらはゴブリンといくら交流しても、本については「がんばって持ってきた」程度にしかわからない。  また動機について聞いてもPC1やPC4に「いいことがある」としか教えてはくれない。  なお、ゴブリンが好意を持とうと、悪意を持とうと、PC1ないしPC4に対して行う行動は変わらない。これは善意ゆえのおせっかいであり、また悪意ゆえの悪戯でもあるのだ。  2ラウンド目終了時、ゴブリンが〔壁の華〕になっていようといまいと、彼らは物陰に隠れる。もっとも、遠くに消えてしまうのではなく、PC2とPC3には、今もすぐ傍で見守っているとわかるだろう。  『常夜年代記』を誰かがさらにページをめくったか否かで、次の幕は大きく変わる。  DRはPCの行動に合わせて次の〔戦の幕〕を2種類あるどちらにするか、判断せよ。  『常夜年代記』のページをめくったなら〔戦の幕A〕へ。  『常夜年代記』を読まなければ〔戦の幕B〕へ。 ●村人のセリフ 「さすがは騎士様だ!」 「なんと美しい……」 ●ゴブリンのセリフ 「キャッキャッ」「マッテー」「ヨカッタネー」「イイコトアルヨ-」 ■戦の幕A  この幕では、PCの誰かが読み進めようとした『常夜年代記』より、秘匿卿が現れる。秘匿卿は、PCらに問答無用で攻撃を仕掛けて来る。 ●幕の諸元 NPC種別 〔端役〕ゴブリン(喝采役/P264)     常夜年代記(地獄の鎖/P264)     村人(喝采役/P264) 〔脇役〕秘匿卿(P257「復讐者」) NPC配置 庭園:ゴブリン/宮廷:常夜年代記×1、秘匿卿×〔参加PC数÷2〕/玉座:村人 存在点 秘匿卿(PC2人の場合):10点 秘匿卿(PC3人の場合):各8点 秘匿卿(PC4人の場合):各10点 行動値 秘匿卿:〔参加PC数×12〕 壁の華 村人:黙り込むか、呆然としている ゴブリン:物陰に姿を消す 常夜年代記:ページを閉じてただの本になる 秘匿卿:鎧だけが地面に転がり、その鎧も塵になる(封印は不可) 絆奏 禁忌:【欲】 ●口上  DRは次の口上を読み上げる。 ◆◆◆◆以下、空白改行までフォント変更  〇〇卿(ページをめくったPC)が『常夜年代記』なる書のページをめくると同時に。  遠雷のような音が響き、奇妙な渇いた風が吹いた。  古い廃墟のような匂いが辺りに満ちる。  彼の書の続きを見ようと開いた目の前に、剣が突き付けられた。 「我(ら)は秘匿する者。秘密の番人。永劫の守人。禁忌に近づく愚かなる者を退ける剣。いざ書を置き、剣を取れ。貴卿らの罪には地獄がふさわしい」  突然、目の前に黒い騎士が立ち、戦を求めて来た。  思わず本を手放せば、開かれた本のページは歪み……ヘルズガルド騎士のみが操るという、地獄の門が小さく開いている。そこからは罪人を縛り苦しめるという鎖が伸び、罪人を探し求めているようだ。  酒場の中からは村人たちも見ている。  騎士として背を向けるわけには行くまい。 ●詳細  この幕でPCらに与えられるノワールは、特に記述がなければ全て「禁忌への【欲】」となる。  PCらは『常夜年代記』の秘密への好奇心を刺激され、それを抑えるため【潤い】を費やさねばならなくなるのだ。  DRは、『常夜年代記』とゴブリンが端役であると明かすべきだが、その効果は隠しておいてもよい。  この〔戦の幕〕は「庭園」を村の家々の陰、「宮廷」を村の広場、「玉座」を酒場とする。  「庭園」では物陰でゴブリンたちが、「玉座」では村人たちが騎士たちの戦いを見ている。彼らはどちらもそれぞれ、PCに喝采を送り応援してくれる。  もしPCがノワールによってゴブリンを〔壁の華〕にしたなら、〔終の幕〕にゴブリンは登場しない。さらに〔後の幕〕にも影響がある。  秘匿卿はPCらをひたすら攻撃する。  特にページをめくったPCを優先的に攻撃する。そのPCが移動すれば、彼らもまた移動して追撃してくるだろう。  しかし、彼らは存在点が0にならずとも、2ラウンド目が終了すれば、〔壁の華〕になった時と同様に、悔しげなうめき声を残して崩れ、消えてしまう。   ●秘匿卿のセリフ 「己の罪を刻め!」 「汝らが行いにふさわしき結末を迎えるべし!」   ●ゴブリンのセリフ 「ガンバレー」「イケー」「ヤッター」 ●村人のセリフ 「なんと恐ろしい! あれはまさか堕落者!?」 「これが騎士様の戦い……!」 ●結末  この幕の後、DRは『常夜年代記』をどうするかPCらに尋ねること。  書を開くことを諦め、ダストハイムに返す決断をしたなら問題はない。  それでも書を開いて中を見ようとしたなら……何度か本当に読むのか聞き返そう。  PLが軽い気持ちのようなら、以下の結末についてPLに教えた上で、選択を迫ってもよい。  『常夜国年代記』を読んだPCは、恐るべき禁忌の秘密を知ってしまう。秘密はあまりに重く、知ったPCは他の者にそれを教えたりはできない。教えれば即座に「黒山羊(P258)」へと堕落し、NPCとなる。DRは、PCが秘密を洩らせばどうなるか、教えてよい。  〔終の幕〕において、セイズマリー公の態度は静かな怒りを伴ったものとなるだろう。また、〔後の幕〕にも重大な影響を与える。  禁忌の秘密については、以後のシナリオの中で決めてゆこう(後述)。DRはただ「恐るべき秘密」とのみ言っておけばよい。複数のPCが秘密を読んでしまったなら、少し時間を割いて詳細を決めてもいいだろう。  いずれにせよ〔終の幕A〕へ進む。 ■終の幕A  前の幕でどのような結末を迎えようとも、カルモルテにてPCらは一泊せねばならない。騎士らは宿にて眠りにつく。そして夢の中で“書斎公”の裁きを受けるだろう。   ●幕の諸元(A・B共通) NPC種別 〔端役〕ゴブリン(喝采役/P264)     地獄の鎖(地獄の鎖/P264) 〔脇役〕セイズマリー公(データ参照) NPC配置 庭園:ゴブリン/宮廷:地獄の鎖×〔参加PC数〕/玉座:セイズマリー公、地獄の鎖×〔参加PC数〕 存在点 セイズマリー公:〔参加PC数×12〕点 行動値 セイズマリー公:〔参加PC数×15〕 壁の華 セイズマリー公:PCらを認め、会話を始める(封印不可) 絆奏 禁忌:【欲】 ●口上  DRは次の口上を読み上げる。 ◆◆◆◆以下、空白改行までフォント変更  野や森で疲れ、裸形で休むなど、騎士にあるまじき有り様だ。  秘匿卿を堕落者かあるいは悪しき妖精として伝え、村人らのさらなる歓待を受ける。  もっとも彼の『常夜年代記』は放置できまい。  得難い宝でもあり、ダストハイムに返すべき品でもある。  そうして貴卿らは宿のベッドにて眠りにつく。  具現化した品々が解け、生まれたままの姿となる中で。  貴卿らの意識は、なぜか同じ夢の中にある。  ずらりと並ぶ無数の書棚。びっしりと満ちた書。  ダストハイム騎士ならば知るであろう。  これこそが無限書庫。  全ての騎士の記憶をたどり、未来すらわかるという無限書庫……。  貴卿らは夢を介してとはいえ、そこにいる。  そして目の前にふわりと浮いているのは、セイズマリー公その人だ。 「無限書庫へようこそ。久しぶりの客人ですね」  言葉に反して、その目は冷たい。 「彼の書を開いたことについて、釈明はありますか?」  貴卿らの行いは、彼の始祖の逆鱗に触れてしまったらしい……。 「その行いに堕落の兆しがないか。心清きままか。測るとしましょう。禁忌に触れんとする好奇心に打ち勝ちのです」 ●詳細  この幕でPCらに与えられるノワールは、特に記述がなければ全て「禁忌への【欲】」となる。  もし、PCの誰かが『常夜年代記』の内容を少しでも読んでいたなら、宮廷に秘匿卿が1体、追加で配置される。彼は存在点〔PC人数×3〕を持つ。さらに行動値の合計も〔PC人数×2〕だけ上昇する。  基本的に、セイズマリー公らの攻撃は容赦なく行われる。特に《偽典:アヴァローム》を毎回使用するだろう。  彼女はゴブリンの責任を追及する気はない。あくまでPCを集中的に攻撃する。  もし本を読んだPCがいたなら、そのPCを最優先で攻撃する。秘匿卿も、基本的に同様だ。  PCらが「地獄の鎖」を全て〔壁の華〕にしたなら、彼女は少しだけPCを見直す。 ◆◆◆◆以下、空白改行までフォント変更 「地獄の鎖を破れるならば。それほどまでには堕落しないと見るべきでしょうか」 「しかし、その情熱がこの事件を招いたなら。あなたは、己の誠実を証立てねばなりません」  武器などによる攻撃的な〔行い〕を受けた場合、セイズマリー公は本のページを無数に具現化して防御する。存在点は、彼女が攻撃を防ぎきる許容度としよう。  戦いの後、セイズマリー公を〔壁の華〕にすれば、彼女の姿は揺らぎ、消え始める。  PCら自身が、眠りから覚めようとしているのだ。  そして、あくまで夢を介して現れた彼女は、『常夜年代記』をそれを読んでいないPCに託す。 ◆◆◆◆以下、空白改行までフォント変更 「その本を読まず、私の手元まで持ってきなさい。そうすれば……あなた達を信じ、ふさわしき使命を与えましょう」  言葉を聞いた瞬間、全てのPCが抱えている「禁忌への欲」は「セイズマリー公への欲」に変わる。  彼女はそれだけを言い残して消える。  ゴブリンらは〔庭園〕に留まり、PCが同じエリアに来た場合のみ喝采点を与えて来る。  ただし、PCがノワールによってゴブリンを〔壁の華〕にしたなら、〔後の幕〕に影響がある。  なお、もし本を読んだPCがいるなら……。  そのPCは先に、無限書庫から追放される。  そして残ったPCらに、禁忌の秘密を知ったPCの討伐と封印を依頼する。 ◆◆◆◆以下、空白改行までフォント変更 「あの方を必ず封印してください。そしてあなた方もどうか、秘密には触れないよう……」  もし、全員が読んでいたなら、何も言わず姿を消す。  『常夜年代記』はPCらの手元に残されるが、ダストハイムか……あるいは他の騎士が、無限書庫を経てPCらを討ち取るよう依頼を受けているのかもしれない……。PCらは不徳の騎士と扱われる。 ●セイズマリー公のセリフ 「罪には相応の罰を。私には裁きの権利がないとでも?」 「妖精が勝手に? ですが彼らがこのようなことをする原因は……あなたにあったのではありませんか?」 「その書の中を見た以上、あなたは必ず地獄に封じます」 ■戦の幕B  この幕では『常夜年代記』を読まず、宿で休む。そして今度は、彼の書を送られたPCのベッドに、就眠中のセイズマリー公当人が送られる。そして書物から、始祖への忠義のため、秘匿卿が現れる。 ●幕の諸元 NPC種別 〔端役〕常夜年代記(地獄の鎖/P264)     ゴブリン(喝采役/P264)     セイズマリー公(心なきもの/P264) 〔脇役〕秘匿卿(P257「復讐者」) NPC配置 庭園:ゴブリン/宮廷:常夜年代記×1、秘匿卿×〔参加PC数÷2〕/玉座:セイズマリー公 存在点 秘匿卿(PC2人の場合):10点 秘匿卿(PC3人の場合):各8点 秘匿卿(PC4人の場合):各10点 行動値 秘匿卿:〔参加PC数×12〕 壁の華 常夜年代記:ページを閉じて、セイズマリー公の手の中におさまる セイズマリー公:じっとPCらを観察し始める(封印は不可) 秘匿卿:本の中へと消えてゆく(封印は不可) 絆奏 禁忌:【欲】 ●口上  DRは次の口上を読み上げる。 ◆◆◆◆以下、空白改行までフォント変更  貴卿らは『常夜年代記』なる書を読んではならぬと感じ、閉じた。  しかし、おそらくはダストハイムにおける重要なる書。放置するわけには行かぬ。民らとて読んでよいものではあるまい。  これより向かうダストハイムにて、セイズマリー公に手渡すが吉であろう。  貴卿らはそのように判断し、今夜はひとまず宿にて休むこととした。  村人らは個別の部屋を用意してくれている。  彼の書を守るは、ゴブリンらに渡された〇〇卿(本を渡された騎士)がいいだろう。  妖精の贈り物、好意を無下にすれば彼らのいらぬ怒りを買うやもしれぬ。  眠る前には焼き菓子とミルクも置いておこう。 (ここで、まずはPCらにそれぞれの寝入り方など描写してもらおう) ◆◆◆◆以下、空白改行までフォント変更  さて、〇〇卿はこうして眠りについた。  しかし、ベッドに入り具現化を解き……眠りに入らんとするちょうどその時。  きしりと、貴卿のベッドが小さく軋んだ。  気づけば、隣に誰かが寝ている。 「ツレテキタヨー」 「ヤットアエタネー」  ゴブリンの声。  眠りにつき、無防備な姿をさらす彼女は……ダストハイム当主、“書斎公”セイズマリー・ドラクル・ダストハイムその人であった。  彼の『常夜年代記』が禍々しく輝く。  その内から、怒りに満ちた唸り声が響いた。 「起きてくだされ、セイズマリー公! 不埒なる者の手にて、御身はかどわかされり!」  目を光らせた黒い甲冑の騎士が、『常夜年代記』の内より現れる。  他の眠りかけた騎士らにも、その声は聞こえよう。  〇〇卿の傍では、セイズマリー公が目をこすり身を起しかけている……。  彼女の顔に眼鏡と衣服が具現化した。 「ここは一体……」 「貴卿も騎士ならば、その御方より離れよ!」  黒い騎士の声が宿の部屋に響いた。他の部屋に眠る騎士らも飛び起きんばかりの大声だ。 ●詳細  この幕でPCらに与えられるノワールは、特に記述がなければ全て「禁忌への【欲】」となる。  この幕において、『常夜年代記』と同じ部屋に寝たPCのみは「玉座」に配置される。  他のPCは、現れた秘匿卿の声を聞き、彼のPCの部屋に訪れた形だ。  部屋の外や物陰(廊下、天井裏、ベッドの下など)にはゴブリンがおり、騎士が贈り物(セイズマリー公)にどんな反応を示すか楽しみに見守っている。  「宮廷」は事件の起きた寝室であり、「玉座」はまさにセイズマリー公の現れた寝台とその傍だ。  ゴブリンらは〔庭園〕に留まり、PCが同じエリアに来た場合のみ喝采点を与えて来る。  もしPCがノワールによってゴブリンを〔壁の華〕にしたなら、〔終の幕〕にゴブリンは登場しない。さらに〔後の幕〕にも影響がある。  秘匿卿は、主たるセイズマリー公に対する不埒の行いに怒り、「玉座」にいる騎士を攻撃しようとする。  ただし、複数いるなら1体は「宮廷」の騎士に矛先を向けるだろう。  セイズマリー公は積極的な攻撃はせず、自衛のために魔法じみた技を使う。彼女の行動について、DRは建物を壊さない範囲ならいくらでも望む表現で華々しい行動を演出してよい。  ゴブリンのセリフは、〔戦の幕A〕と同様である。  秘匿卿が倒されれば、セイズマリー公は『常夜年代記』を手に、立ち上がる。  以下の口上を読んで、〔終の幕B〕へ進め。 ◆◆◆◆以下、空白改行までフォント変更  セイズマリー公は周囲は静かに腕をひろげて……。  宿の部屋を、びっしりと本の詰まった本棚が無数に並び、広がる空間へと変えてしまう。 「無限書庫へようこそ。久方ぶりの来客ですね」  感情の読めない冷たい目をして、彼女は言った。 ●秘匿卿のセリフ 「大いなる始祖たる御方に不埒の行い、騎士の風上にも置けぬ!」 「その罪、我(ら)が清めてくれん!」 「おのれ口惜しや……我が力及ばぬばかりに……」 ●セイズマリー公のセリフ 「これは……妖精の仕業? アヴァロームの騎士はいますか?」 「眠っている私を運び出させるとは、相当に強い想いのようですけど……」 ■終の幕B  宿の一室に運ばれてきたセイズマリー公は、周囲を無限書庫に変えてPCらを迎える。そしてPCらの行いが正しきものかを測ろうとするだろう。   ●幕の諸元 NPC種別 〔端役〕ゴブリン(喝采役/P264)     地獄の鎖(地獄の鎖/P264) 〔脇役〕セイズマリー公(データ参照) NPC配置 庭園:ゴブリン/宮廷:地獄の鎖×〔参加PC数〕/玉座:セイズマリー公、地獄の鎖×〔参加PC数〕 存在点 セイズマリー公:〔参加PC数×12〕点 行動値 セイズマリー公:〔参加PC数×15〕 壁の華 セイズマリー公:その姿は揺らぎ、消える(封印不可) 絆奏 禁忌:【欲】 ●口上  DRは次の口上を読み上げる。 ◆◆◆◆以下、空白改行までフォント変更  貴卿らが神秘なる秘匿卿らを打ち破ったと同時に。  セイズマリー公の手の中で、彼の『常夜年代記』が開かれ文字が溢れ出す。  カルモルテの宿の一室は文字に埋め尽くされ、貴卿らは異様な空間にその身を浮かべていると気づくだろう。  眼下に並ぶのは無数の書棚と、さらに無数の書籍。  見渡すばかりの書棚、書棚、書棚。  それは遥か彼方へと拡がり果ても見えない……知識の地平線。  目の前に浮かぶのは、彼の“書斎公”。 「我が無限書庫へようこそ」  貴卿らではなく書を損なわせまいとの配慮だろう。  セイズマリー公はふわりと書棚の上に浮かび、また貴卿らも同様に浮かぶ。  足元の書棚の上には小さなゴブリンたちまで来ているようだ。 「妖精たちが私をここに運び込んだなら。それはどなたかの想いゆえのはず」  セイズマリー公が、貴卿らを一人ずつ見てゆく。 「私に何を求めるのですか? 何を求めるにせよ……試練が必要ですね」  貴卿らの足元で地獄が口を開き、地獄の鎖が伸びて来る!  今はこの試練を潜り抜けねばなるまい!   ●詳細  この幕でPCらに与えられるノワールは、特に記述がなければ全て「禁忌への【欲】」となる。  全てのエリアは無限書庫だ。  ダストハイムの名高き無限書庫より逃れる術はない。  ここはセイズマリー公が具現化させた世界なのだ。  なお、セイズマリー公はゴブリンたちを怒らせはしない。ゴブリンを罵ったり、地獄の鎖で攻撃したりもしない。  ゴブリンらは〔庭園〕に留まり、PCが同じエリアに来た場合のみ喝采点を与えて来る。  もしPCがノワールによってゴブリンを〔壁の華〕にしたなら、〔後の幕〕に影響がある。  セイズマリー公はPCらを容赦なく攻撃するが、《偽典:アヴァローム》は必ず判定値12で使用する(より高い判定値にはしない)。また、他に対象がいない場合を除き、特定の一人に攻撃を集中させもしない。  武器などによる攻撃的な〔行い〕を受けた場合、セイズマリー公は本のページを無数に具現化して防御する。存在点は、彼女が攻撃を防ぎきる許容度としよう。  セイズマリー公の存在点が0になったなら、彼女は姿を消す。無限書庫という彼女の世界を介して、ダストハイムへと帰還したのだ。『常夜年代記』も、セイズマリー公によって持ち帰られる。  無限書庫は元の宿の一室となり、全ては一夜の夢の如く思えるだろう。  ただし、無限書庫が宿の部屋へと戻る寸前……PC達にセイズマリー公の声が聞こえる。 ◆◆◆◆以下、空白改行までフォント変更 「よくぞ私の試練を打ち破りました。セイズマリー・ドラクル・ダストハイムの名において、あなた達を誉れある騎士と認めましょう――今度は妖精に願わず、己の足で私の元に来てください。その誉れにふさわしき褒章をさしあげましょう……」 ●ゴブリンのセリフ 「ワー」「ヒローイ」「ホン イッパーイ」「スゴーイ」 ●セイズマリー公のセリフ 「想いだけが妖精を動かす。そして私はここへ導かれて来ました。あなた達にそれだけの望みがあったのですか?」 「これ(『常夜年代記』)は、私たち始祖にとって重要な書です。持ち出した罪を許すには、相応の試練が必要でしょう」 「なるほど。堕落の道を歩んでいるわけではないようですね……では、これはいかがですか?」 「長く生きていれば――あなた達の知らない力も、知っているものです」 ■後の幕  PCの選択によって、このシナリオは主に4つのエピローグに分かれる。  また、〔戦の幕〕〔終の幕〕でゴブリンにノワールを与えて〔壁の華〕にしていた場合、これらのエピローグに加えて追加のイベントが発生する。 ●エピローグ:『常夜年代記』の内容を読んでいない騎士  終の幕Aを無事に終え、また『常夜年代記』を読んでいないPCはセイズマリー公からの信用を得られる。  そして、ゴブリンたちが盗み出した『常夜年代記』を、セイズマリー公の元へ届けるよう命じられる。決して書の中身を読むことなく、彼女の書棚に戻さねばならない。  新たな使命を得たPCらは、より確固たる足取りでダストハイムへ向かこととなる。  以下の口上を読み上げよ。 ◆◆◆◆以下、空白改行までフォント変更  目覚めれば、貴卿らは再びカルモルテの宿にある。  一夜の酔夢は、貴卿らに禁忌の知識に至る門を与えた。  手の内にあるは『常夜年代記』。  おそらくは全てを揺るがすやもしれぬ一冊。  貴卿らは禁忌の知識に触れるべきでないと、知っている。  始祖たるセイズマリー公の言葉の重みを、知っている。  貴卿らは旅立たねばならぬ。  この書を、貴卿ら自身の手でセイズマリー公へと返すのだ。  小鬼らの悪戯が見せたカルモルテの酔夢は、その時こそ覚めるだろう。  いざや夢の続きを。  夢幻の内と思え。  己の好奇心を縛り、書をダストハイムへと運ぶのだ。  いざ旅立ちの鐘が鳴る。  貴卿らの酔夢に、幸福なる目覚めがあらんことを。  そして各々の旅立ちの様を描写させて幕切れとしよう。  領主ならば領地を捨て、遍歴にでもならねばなるまい。  道中で、『常夜年代記』を狙う不埒の輩が現れれば、秘匿卿が現れてPCらに助太刀してくれるだろう。  もし、PCらの中に『常夜年代記』の内容を知った騎士がいれば、読んでいない騎士らはその捕縛ないし討伐も命じられる。この追跡劇ないし捕縛劇は、新たな物語の幕あけともなるはずだ。 ●エピローグ:『常夜年代記』の内容を知った騎士  許されざる罪を得た。  秘密を知ったPCは、もはやまともな騎士ではいられない。  心の歪みは体の歪みともなっていく。『常夜年代記』を読んだ(または内容を知った)PCは〔終演後〕において、逸話の選択ができない。「醜聞の逸話」である†まさに堕落の兆しを得たり†を自動的に獲得する。恐るべき秘密を知ったPCは、渇きすら関係なく己の存在を歪ませてしまうのだ。また、強制的に道を「夜獣」に変更しなければならない。  しかも、他のPCから追われる身となってしまう。  もし全員が『常夜年代記』を読んだなら……ダストハイムはPCらを封印すべく、多数の騎士を刺客として送り込んでくるだろう。そこには彼の“冒涜卿”と、その怪物らも含まれるかもしれない。  PCが知った禁忌の内容は、DRが自由に決めてよい。  禁忌は常夜国の歴史や、真祖の真実に関するものかもしれない。あるいは、セイズマリー公のプライベートに関するものかもしれない。いずれにせよダストハイム公爵家は、この禁忌を知る者を許さない。  堕落者と同様に追われるだろう。  また、禁忌の秘密を(民と騎士を問わず)洩らせば、その忌まわしき行いはPCを堕落させる。PCは「黒山羊(P258)」へと堕落し、NPCとなる。 ●エピローグ:セイズマリー公に認められた  終の幕Bを無事に終えたなら、PCはダストハイム当主セイズマリー公に認められた。  ハンドアウトにおけるPC1、PC4ならば、もはや居ても立っても居られぬはずだ。  PC2、PC3とても、このような栄誉を前に、ダストハイムへ向かわぬ理由もあるまい。  PCに領主がいたり、カルモルテの村やゴブリンと何かしておきたいなら、任意に描写させよう。  そうして、以下の口上を読み上げて幕切れとせよ。 ◆◆◆◆以下、空白改行までフォント変更  一夜の酔夢より覚めた朝。  出発する貴卿らの足取りは軽い。  全ては夢の如きなれども、セイズマリー公の声は全員の耳に残っている。  貴卿らはその行いと情熱を認められ、ダストハイムへの招待を受けた。  始祖自ら、褒章を約束なされたのだ!  いざ、ダストハイムへと向かうべし!  カルモルテの酔夢は、大いなる誉れをもたらしてくれた!  よき贈り物をもたらしてくれた、小さき小鬼らにも感謝を忘れずに!  貴卿らの旅路に、その栄光にふさわしき幸運のあらんことを! ●エピローグ追記:ゴブリンにノワールを与えた  〔戦の幕〕〔終の幕〕でゴブリンにノワールを与えて〔壁の華〕にしていた場合、PCらの前に二度とゴブリンは現れない。特にハンドアウトのPC2、PC3にとってこれは大きな事件となるだろう。  もっとも、PLらがセイズマリー公について夢中になり、彼らを忘れているなら無理に〔後の幕〕で描写しなくてもよい。ただ一言、PC2とPC3に「あれからゴブリンたちの姿を見ない」とだけ言えばいいだろう。  PLらがゴブリンに敵意を抱いてしまったなら、それを無理にほぐすべきではない。彼らの行いが迷惑なおせっかいだったのは確かなのだ。  その一方で、DRは次回以後のセッションにおいて、ゴブリンらによる“仕返し”を行わせてもよい。親切を仇で返された彼らは、明らかな悪意を込めた悪戯を仕掛けてくるだろう。 ●エピローグ:全員が堕落した  PC全員が堕落したなら、このエピローグをたどる。  終の幕Bにおいて全員が堕落したなら、セイズマリー公から憐れみの言葉程度はあるだろう。  始祖の前で堕落した騎士に、もはや未来はない。  ただ以下の口上を読み上げて幕切れとせよ。 ◆◆◆◆以下、空白改行までフォント変更  もはや全ては終わり。  貴卿らの堕落は、セイズマリー公その人によって知られている。  ゴブリンたちも知っている。  カルモルテの民を襲い血を飲もうとも、そのまま逃げ出そうとも。もはや貴卿らの命運は尽きた。  禁忌の秘密を守らんとするダストハイム当主セイズマリー公。  始祖より申請を受けたヘルズガルド当主マルグリット公。  ゴブリンらから次第を知ったアヴァローム当主アリエル公。  三人の公爵家当主と、その直属の騎士や妖精らが貴卿らを追い詰め、地獄へと封じる。  カルモルテの酔夢は、もはや覚めぬ悪夢となったのだ。 ■『常夜年代記』の禁忌  このシナリオに登場する『常夜年代記』には恐ろしい秘密が書かれている。PCが書を読まなければ、この秘密は永遠に謎のままとなるだろう。この項目の記事を読む必要もない。  しかし、PCが『常夜年代記』を読んでしまえば……禁忌の知識は明らかとなってしまう。そしてPCには破滅が訪れるだろう。  DRは、この禁忌について深く考えなくともよい。けれども、続きとなるシナリオを考えたり、読んだPLがどうしても知りたいというなら、以下の知識を与えてもよい。 ◆◆◆◆以下、空白改行までフォント変更  かつて真祖ドラクルと始祖らは、人間から怖れられた。太陽の支配する世界では民の血を必要とし、数多の領地と国を攻めては諸王とその民を貪り喰らったのだ。そして数多の国から幾度も討伐の兵を送られた。何度も危機に陥り、何度も破滅を迎えかけた。  それでもドラクルと始祖らは滅びなかった。  やがてドラクルは幾百年を経て力を蓄え“常夜”をもたらす。  諸王と民は、残された始祖らを憎んだ。太陽を取り戻すべく、彼女らを討たんとしたのだ。  そして百年、始祖らは血まみれの戦を続けた。  太陽のあった時代を知る民が、誰一人としていなくなるまで戦い続けたのである。 ■データ ●セイズマリー・ドラクル・ダストハイム(終の幕) 存在点〔参加PC数×15〕 《偽典:ドラク》戦/3〜15/0〜1/他の1体/対象にノワールを〔判定値÷3〕与える。 《偽典:ゲイズヴァルト》戦/6/0/他の1体/ノワール2点を与える。対象がこの〔行い〕への〔抗い判定〕に成功してもルージュを1点与える。 《罪業、棘となりて》戦/9/1/他の1体/刻印具現化。対象はノワールを得る時、追加のノワールを1点得る。 《偽典:ヘルズガルド》戦/12/0〜1/エリア/任意の存在にノワールを2点与える。選択された存在は次の自身のターン終了時まで移動できない。 《偽典:ノスフェラス》常/9/0〜1/他の1体/対象に己へのノワールかルージュ1点を与える。貴卿は己の存在点を1点回復する。 《語られざる言葉》常/2/0/他の1体/対象に己へのノワール1点を与える。 《正典:ダストハイム》常/7/0/エリア/任意の存在全ては、己へのノワールまたはルージュを1点得る。各自がどちらの効果を得るかは貴卿が決めてよい。 《偽典:アヴァローム》常/12/0〜1/エリア/領域具現化。そのエリアで〔栄光の目〕は追加出目10を発生させない。さらに〔栄光の目〕を発生させたキャラクターは己へのノワール1点を得る。