■『誰かのために成りかわるTRPGバケノカワ』 シナリオ「リスタートには近すぎて」 これは、『誰かのために成りかわるTRPGバケノカワ』をプレイするためのシナリオです。 -------------- 執筆:平野累次/冒険企画局 (C)Ruiji Hirano 2021 (C)Adventure Planning Service 2021 (C)KADOKAWA CORPORATION 2021 -------------- ■注意事項  以降は、このシナリオを使ったセッションでGMを務める方のみが目を通すことを推奨します。 ■シナリオ本文  このシナリオは、「TRPGフェスティバルオンライン2021」で使用された、『バケノカワ』のシナリオです。  セッションを行う前にGMは、このシナリオで使用するバケノカワシートを以下の「0 本シナリオのバケノカワシート」内の指示に従って作成してください。 0 本シナリオのバケノカワシート  本シナリオのバケノカワシートは、以下のデータを使用します。 名前: ファッション特徴: 遊園地の思い出:スポーツの大会に挑む直前に、気晴らしとして親友と出かけた 担当施設: バケノカワの癖 1:肉まんを食べる 2:体を動かしていないと落ち着かない 3:多めにカロリーをとる カバーパーソナル 内容:親友が奏でるピアノの演奏を聞いていた パーソナル技能:《音楽》    空白の項目(名前・ファッション特徴・担当施設)は、本シナリオでは指定されていません。  チェインPCのプレイヤーが決定し、各項目を埋めていきます。 1・01 NPC   ●西さくら(にし・さくら) 女性  チェインPCのバケノカワと親友の人物です。  PCがワンダーランドで働き始めてから、毎週のように通っています。  普段からメールをしたり、メッセージを送り合ったり、好きなものを語ったりしています。  昔からピアノを習っていて、今はピアニストとして活動をしています。  何度かコンサートも開いており、チェインPCは誘われて何度か出席しています。  ピアノの腕前は世界的に有名で、海外に行って本格的にやらないかと誘われているほどです。  その誘いは保留しています。その理由は、チェインPCのことが心配だからです(このシナリオで行うパレードが成功した場合、それを告白して海外に行くことになります)。  女性を想定していますが、そうでない場合でも対応できるようにしてあります。  年齢はチェインPCのバケノカワと同じです。特に年齢を設定していない場合は、19歳となります。 1・01・01 チェインPCのバケノカワ  本シナリオでチェインPCに渡されるバケノカワシートの内容をかいつまんで説明すると、以下の通りになります。 ・ピアノをやっている親友がいる。 ・肉まんをよく食べる。 ・どちらかといえば体育会系。  GMは、バケノカワシートを渡す際に以上の内容を伝えてください。 1・02 物語の流れ  チェインPCとチェインNPCの「西さくら(にし・さくら)」は昔からの親友です。  さくらはいつもチェインPCを気にかけてくれて、時には励ましてくれる存在でした。  チェインPCはそんなさくらにお礼を言うために、パレードを企画します。  そのタイミングで、チェインPCの脳裏に、“チェインPCのバケノカワがさくらに対して”「もう二度と会うことはない」と言い放ったことを思い出します。  だというのに、さくらは何事もなかったかのように自分と会っていたのです。  PCたちは、二人の間に何があったのかを探りつつ、パレードでさくらに対して「何を伝えるのか」も探ることになります。 1・03 開演フェイズ  開演フェイズは、ルール通りに行って行きます。  『バケノカワ』をはじめて遊ぶ参加者(GMも含みます)がいる場合、GMはプレイヤー全員にバケノカワとなった人物は既に死亡していること、その人物と「大切な人たちを悲しませない」という契約を交わしていることを改めて伝えてください。 ●レジリエンス  レジリエンスは、チェインNPCがチェインPCの施設を訪ねるところから始まります。  チェインPCが、ワンダーランドで働いているところを描きます(先に行った施設紹介を参考にしてください)。  そこに、チェインNPCのさくらがやってきます。さくらは週に一回ぐらいの頻度で来ており、そのたびにチェインPCに挨拶するのが「いつもの光景」だと説明してください。チェインNPCが訪ねてくるのは何度目かなので、慣れたものだとも説明します。  チェインPCのバケノカワと、チェインNPCの関係が「学生時代からの親友」であることを説明しつつ、軽いロールプレイをしてください。  そのロールプレイでは、以下の要素を交えて行うか、以下の要素をGMが直接説明をしながら行ってください。 ・学校が同じで、チェインPCのバケノカワはよく音楽室でさくらのピアノを聞いていた。 ・お互いに好物を知っている。なので、ワンダーランドに来たさくらは、チェインPCのバケノカワが好物の「コンビニの肉まん」を渡す。もし、さくらの好物の情報が必要なら、「コンビニのあんまん」としてください(そのことはチェインPCも知っています)。 ・学校の卒業後も連絡を取り合っていて、ピアニストになったさくらのコンサートにも度々出席している(これはバケノカワになった後でも続いている)。  以上のロールプレイや説明によって、チェインPCとさくらは「とても仲のいい昔からの親友」であると強調してください。  さくらは、いつもワンダーランドにきて、チェインPC(正確にはそのバケノカワ)の心配をしてくれています。  そんなさくらにお礼を言うために、チェインPCはパレードを開くことを思いつきます。  パレードを開くと決めた日の夜、チェインPCは夢の中で、「知っているけど知らない記憶(つまりは、バケノカワの記憶)」を見ます。  それは、チェインPCのバケノカワがさくらに対して「もう二度と会うことはないよ。さようなら」と言い放った瞬間でした。  その記憶は、バケノカワが作られた(つまりは行方不明になった)少し前の出来事です。  そこまで描写してから、レジリエンス判定を行います。使用する技能は《切なさ》です。  レジリエンス判定に成功するとワンダートークンを1個獲得します。内容は「幼馴染との日々」です(失敗しても、ワンダートークンが得られないだけです)。  その記憶を抱えながら、チェインPCはワンダーランドの仲間(アシストPC)とパレードの準備をしていきます。 ●シナリオシート  GMは、ルールに従ってシナリオシートの内容を埋めていきます。GMが記入する内容は、以下の通りです。 ・企画ターゲット 西さくら ・企画者と企画ターゲットとの関係 昔からの親友 ・遊園地の思い出 チェインPCから贈り物を貰った ・接触技能 《闘争心》 ・好みA技能 《音楽》 ・好みB技能 《衣装》 1・04 企画調査フェイズ  このシナリオのリミットは「2」です。  PCたちは協力をして、ワンダーランドを盛り上げつつ、チェインNPCである西さくらについて調べていくことになります。  ルールに従って、企画調査フェイズを進行しましょう。 ●接触の演出  接触を行った場合、チェインPCはさくらに会いに行きます。  さくらは普段からチェインPCと会ったり、メッセージを送り合ったりする仲のため、判定する際は「さくらに大事なことを聞く覚悟を決めること」や「過去のことを強く思い出す」、「学生時代の仲間から話を聞いてみる」などの演出を行ってください。  接触では、以下のことが分かります。  さくらは、自分に憧れを持っていました。  だから、いつも献身的だったし、チェインPCのバケノカワはそれに優越感を覚えていたのです。  そんなさくらとの関係が変わったのは、チェインPCがやっていた部活の大会が終わったときです。  チェインPCのバケノカワは、地区予選(部活の内容によっては臨機応変に変化させてください)の3回戦(これも部活の内容によって変えてください)で敗退しました。  もし、「一回目のバケノカワシーン」を既に行っている場合、チェインPCのバケノカワは、「部活レベルではエースでも、ずっと上の人たちがいると思い知らされた」ことがわかります。  そんな折、さくらがピアノで結果を出して、海外留学の声がかかっていると知ります。  チェインPCのバケノカワは、今まで「下」だと思っていたさくらがそうなっていたことに嫉妬して、距離を取ろうとして「もう二度と会うことはない」と言った。  それからしばらくして、チェインPCのバケノカワは、バケノカワになったのです(つまり、人知れず死亡したということです)。  一方で、さくらは、「もう二度と会うことはない」という言葉がなかったかのようにチェインPCのバケノカワに会いに来ていました。  それは、「言われたその言葉を、あえて無視している」ようでした。  バケノカワと入れ替わったタイミングがちょうど「二度と会うことはない」と言った直後だったため、そのことがすっかり抜け落ちて(カイブツは、バケノカワのすべての記憶を覗けるわけではないのですから)、普通の親友に戻っていたのです。 ●クリティカルエピソード  二人の間にあった「差」 ●好みA  さくらはピアノそのものが好きで、聞くのも好きなようです。  いろんな音を聞くことで、自分の糧にしようと決めています。  好みAは「ピアノの音」です。 ●好みB  さくらは、学校の学園祭で、「妖精」をイメージした衣装を着て演奏したことが印象に残っているようです。  そのため、「妖精の衣装」に対する思い入れが強いとか。  好みBは「妖精の衣装」です。 1・05 バケノカワシーン  1回目のバケノカワシーンは接触の際に使うと、判定が有利になることを伝えてください。 ●一回目  チェインPCのバケノカワは、学生時代スポーツに打ち込んでいました。  スポーツの内容はプレイヤーとGMで相談して決めてください。特に思いつかない場合はバスケットボールにしましょう。  学生時代、チェインPCのバケノカワは、部のエース(や部長)として学内ではそれなりに有名人で、「憧れの的」でした。  さくらも、そんな自分に憧れていてくれていた一人で、「勇気を出して声をかけました」と言われたことがきっかけで仲良くなりました。  カバーパーソナル「学生時代はスポーツに打ち込み、エースとなっていた」を獲得します。付随するパーソナル技能は《闘争心》です。 ●二回目  さくらは自分に対してずっと献身的だったし、いろいろとよくしてくれました。  チェインPCのバケノカワは、そのことに調子に乗っていて、さくらがピアノをやっているなんて知り合ってからしばらくの間知らなかったのです。  チェインPCのバケノカワは、その事実に気づいて、親友に向き合っていなかったことを強く後悔をしていました。  カバーパーソナル「さくらがピアノをやっていたことすら知らなかった」を獲得します。付随するパーソナル技能は《退廃》です。 1・06 パレード準備フェイズ  ルールに従って、パレード準備フェイズを進めていきます。  もし、この段階までさくらをパレードに誘っていないのなら、パレードに誘う演出を行ってから、パレードの準備を進めていくとよいでしょう。  さくらは、親友であるチェインPCが誘えば二つ返事で来てくれます。 1・07 パレードフェイズ  ルールに従ってパレードフェイズを行って行きます。  パレードフェイズの内容は、以下のものになります。これは、平均レベル1(切り捨て)向けのものです。そうでないPCが遊ぶ場合、『バケノカワ』216ページの「ビーストアセット」を使って配置を決めてください。 ●最大突破数  5 ●初期配置 【標準型ビースト】10体(『バケノカワ』211ページ) ●1ラウンド目増援配置 【標準型ビースト】5体 【標準型Cビースト】1体(『バケノカワ』213ページ) ●2ラウンド目増援配置 【標準型ビースト】5体 【攻撃型ビースト】2体(『バケノカワ』211ページ) ●チェインビースト  チェインPCのバケノカワがやっていた部活で使われる道具のような姿をしています。  例えば、バスケットボールだった場合は、バスケットボールのような姿です。  ●さくらのスタンス  さくらは最初、チェインPCのバケノカワを探していますが、パレードが本格的に始まると、そちらを見ることに集中します。  音楽が流れると、そちらに耳を傾け、手元で(まるで)鍵盤を弾くかのように指を動かします。 1・08 閉園フェイズ  ルールに従って、閉園フェイズを進行します。  チェインPCは、以下のエピローグを行います。  パレードに失敗した場合、さくらは前と同じように、献身的な態度のまま、週に1回ワンダーランドに通い続け、チェインPCの顔を見ます。  チェインPCはそれに反応を返しながら、以前と同じような毎日を送ることになるでしょう。  パレードに成功した場合、パレード後にさくらは「海外から、こっちに来て本格的にピアノを学ばないかって声をかけられていたけど、迷っていたんだ。(チェインPCのバケノカワの名前)が心配だったから」とをチェインPCに告白します。  チェインPCの返答に関わらず、さくらは「このパレードを見て」海外に行くことを決めたと言います。  その理由は、「チェインPC(のバケノカワ)が心配で日本にいたけど、あのパレードを見たら大丈夫そうだとわかったから」だとチェインPCに伝えます。  その後、チェインPCのエピローグを終わります。  アシストPCのエピローグでは、「いつも同じように接している人に何を伝えられるだろう」という話題を中心にエピローグを描いてきましょう。  プレイヤーのやりたいエピローグがある場合は、そちらを優先しましょう。  エピローグが終わったら、残りの処理を行い、このシナリオを終了します。お疲れ様でした。 1・09 まとめ ・一見仲が二人だけれど、その実「二人の間に溝があった」ということを描いていくシナリオです。 ・物語のキーワードは、「二人の間にあった差が、逆転してしまった」ことです。 ・「心配される側」と「心配する側」も、逆転してしまっています。 ・演出のキーワードは「ピアノ」と「部活」。