■『守りたい人のために魔法を紡ぐTRPGキミトエール』 シナリオ「私は大きな口を開けて待っている」  これは、『守りたい人のために魔法を紡ぐTRPGキミトエール』をプレイするためのシナリオです。 -------------- 執筆:平野累次/冒険企画局 (C)Ruiji Hirano 2025 (C)Adventure Planning Service 2025 (C)KADOKAWA CORPORATION 2025 -------------- ■注意事項  以降は、このシナリオを使ったセッションでGMを務める方のみが目を通すことを推奨します。 ■シナリオ本文  このシナリオは、「ドラゴンブックTRPG祭 2025冬」で使用された、『キミトエール!』のシナリオです。 ■シナリオの概要  このシナリオは、「昔から体が弱く入院を繰り返していた女の子のお友達」が登場します。  お友達は、近所に住むお見舞いに来てくれる優しいお兄さんに淡い想いを抱いています。  というのも、お兄さんには仲の良い女性がいて、その人と良い関係だと知っているからです。  PCは、そんなお友達と仲良くなりながら、お友達を取り巻く状況や、お友達が好むものを知っていきます。  その中でも「赤ずきん」が象徴的なものとして扱われます。  ゲームの後半では、アンティークの力によって、憧れのお兄さんが行方不明になってしまいます。  ほかにも、お兄さんと仲の良い女性も、「お兄さんや、お友達につながるものを認識できなくなる」状態になってしまい……。  PCたちは、事件を起こし、眠ってしまったお友達を起こすために奮闘をします。 ■登場するNPC ●棟本楼子(むねもと・さくらこ) 女性  新たな出会いNPCです。  PCたちのお友達です。年齢はPCたちに合わせますが、小学生高学年から中学生をイメージしています。  生まれつき体が弱く、入退院を繰り返していた人物です。  趣味は読書で、何でも読むタイプですが、特に童話が好きです。 「ほかにやることもないから」勉強をしていたタイプであり、ゲームの序盤に行われる勉強会では、教える側に回っています。  友達や家族といる時は饒舌ですが、知らない人や憧れのお兄さんの前だと「無口」になってしまいます。  また、これはゲーム終盤にわかることですが、彼女は「赤ずきんを食べてしまう狼」にシンパシーを覚えてます。  入院していたときにやってくるお兄さんを「赤ずきん」と考え、その二人の関係を壊すお兄さんと女性のことを「すべてを壊す猟師」だと考えているのです。  なので、好きな赤ずきんは、猟師が登場するグリム版ではありません。 ●桐野百治(とうの・ももはる) 男性  楼子の「憧れのお兄さん」です。年齢は高校生から大学生ぐらいを想定しています。  楼子とは家が近く、昔から一緒に遊んでいました。  入院をし始めた楼子のことも心配をして、お見舞いに訪れては時間が許す限り一緒にいてくれたそうです。  本シナリオでは、PCが登場を望まない限りほとんど登場しません。  というのも、「優しくしてくれる憧れのお兄さん」であるという事実があれば成立するシナリオだからです。  もし、登場させるのならば楼子のことを本当の妹かのように心配しているところを強調しましょう。  あくまでも妹のような扱いであり、楼子の想いが伝わっていないことも描きましょう。  また、楼子は知らないことですが、高校や大学では「イベントではしゃぎすぎる問題児」として知られており、後に紹介する「矢敷亜子」によく叱られて、フォローされています。 ●矢敷亜子(やしき・あこ) 女性  桐野百治といい関係の女性です。百治と同じ年齢で、同じ学校に通っています。  百治のことを「すぐに暴走するバカ」と称しながらも一緒にいてフォローをしている女性で、彼の前に出る時は外見に気を付けています。  そのことは楼子も知っていて、「お兄さんのことが好きな人」という認識です。  こちらも、本シナリオでは、PCが登場を望まない限りほとんど登場しません。  PCや楼子が預かり知らないところに「百治や亜子の物語があり、彼らはお互いに想い合っている」ということがわかれば問題ありません。 ■登場するアンティーク ●テーブルのアンティーク  楼子が入院していた「椿姫総合病院(つばきそうごうびょういん)」の敷地内にある「憩いの森」に設置されたティーテーブルのアンティークです。  憩いの森は入院患者が病を忘れられるように、非現実的な、どこか「童話のような世界」を感じさせるような、小さなスポットです。  椿姫総合病院に入院していた世界的アーティストが、世話になった病院に恩返しをするためにデザインしました。  その際に輸入した古いテーブルが、偶然にもアンティークだったのです。  このアンティークは「空間と認識を歪める」力を持ち、楼子の想いに応えてしまいました。 ■紹介フェイズ  本シナリオの紹介フェイズはルール通りに進行します。 ■予兆フェイズ  予兆フェイズでは、以下の予兆を行います。 ・予兆  魔法使いのPC、魔具生物のPC、素質持ちのPCは、夢を見ます。  ふしぎな話なのですが、PCたちはベッドの中で眠っていました(夢の中なのに)。それを俯瞰しているような視点です。  ベッドの中で眠りながら、「何かを待ちわびている」ような気分で、ワクワクしていたのです。  これは、誰かの気持ちでしょう。夢を通じて、「夢を見ている人」の気分が伝わってきているのです。  やがて、ノックの音が聞こえます。  その音を聞いて、とても嬉しい気持ちになりました。  嬉しい気持ちと共に、PCたちは口が大きく開いて、その口からよだれが出てきます。  気付けば、PCたちの手足は獣のようになっており、顔も「狼」になっていました。  そこで、PCたちは目を覚まします。ふしぎな夢でしたが、印象に残るものでした。アンティークが関係しているのかもしれません。  一方で、一般人のPCは、「宿題を出し忘れてしまい、怒られる」夢を見ました。  少し前に「休みが明けたら提出しなければならない宿題」が出されており、それのことを気にして夢に見たのでしょう。 ■大切な世界フェイズ  大切な世界フェイズでは、「●新たな出会い」が発生します。  1サイクル目が終了したタイミングで、マスターシーン「棟本楼子と憧れのお兄さん」が発生します。 ●新たな出会い  PCたちは、知り合いである棟本楼子の家に呼ばれています。  このタイミングで、PCと棟本楼子の関係を以下の「病弱少女との関係表」を使って決定するか、自分で考えて決定します。この際、「登場するNPC」の項目を参照してどんな人物か伝えましょう(ゲーム後半でわかることは伏せておきましょう)。 病弱少女との関係表 1D6 1 家が近所で、昔はよく面倒を見たり、一緒に遊んだりしていた。 2 たまたま病院の中で会って、診察待ちで暇そうにしていた彼女の話し相手になっていた。 3 学校に向かっている途中で倒れていた彼女を見つけて、助けた時からの縁。 4 彼女が落とした「YFKI-M01」という錠剤を届けた。どうやら希少な薬らしく、困っていたとのこと。 5 彼女の憧れのお兄さんである「桐野百治」と知り合いで、一緒にお見舞いに行ったことがある。 6 同じ病院に入院していたことがあり、その時に仲良くなったが、自分の方が退院が早かった。  棟本楼子は、大きな出術を終えて退院し、学校に通うための準備をしていました。  準備に必要なものを確認したり、家で課題をこなしたりしているようです。PCたちは、その手伝いをしに来たのです。  楼子は元気そうです。「完治したからこれからは普通の子みたいに遊べる」ということを彼女の両親から聞いていますし、健康にも問題はなさそうです。  彼女は元々勉強熱心で、入院中にほとんどの課題も終わらせていたため、「学校の雰囲気」だとか、「長期入院から復帰した学校で不安な彼女」を励ましたりしています。  PCたちはどんなことを言ったのか、考えてみましょう。  楼子は、PCたちの言葉を聞いて、納得したり、元気づけられたりします。どうやら、ずっと入院していたからこれからの生活に不安を覚えているようで、「これからも助けてほしい」ということをPCたちに伝えます。  もし、PCたちが学校に通っている年頃なら、PCに「宿題はどう?」と聞きます。  聞いた場合も聞かなかった場合も、彼女はあと「読書感想文」だけ課題が残っていることを確認します。本は入院していたころから読んでいたものがあるので、それを使って書くつもりとのこと。  PCたちがどんな本で読書感想文を書くのかを聞いた場合、「赤ずきん」であると答えます。実際、赤ずきんを書いたと思われる古びた本は部屋の中にあります。  「大切な想い」を獲得したら、新たな出会いを終了します。 ●マスターシーン 棟本楼子と憧れのお兄さん  PCたちが街を歩いていると、目を輝かせている棟本楼子を見かけます。  楼子は、一回り大きい男性と話をしています。その人物は、近所で「問題児」だと評判の桐野百治でした。PCの設定によっては、自分の知り合いとしてもよいでしょう(●新たな出会いで知り合いになった場合など)。  どうやら、百治は楼子と親しい様子です。百治は楼子に対して優しく語り掛けて、それで楼子は元気になっているということが、傍目にもよくわかります。  百治は楼子が退院して元気な姿を見せていることに心から安堵しており、「これでどこでも行けるね」と語り掛けています。楼子は不安そうにしますが、百治は「大丈夫!」と励まします。  PCたちが声をかけた場合、楼子は慌てて惚けた顔を隠して、百治は返事をします(PCたちが知り合いの場合は馴れ馴れしく、そうでない場合は楼子に友達がいることを喜びます)。  PCたちが声をかける、かけないに関係なく、百治のもとに女性(矢敷亜子です。PCたちが訪ねた場合のみ名前がわかります)がやってきて、「ちょっと百治。あの件についてなんだけど、まさか放っておくわけじゃないよね」と耳を引っ張ります。  その女性は楼子を見かけると、「ごめんね。楼子ちゃん。ちょっとこのバカにやってもらわないといけないことがあるから」と言って、引っ張っていってしまいます。百治は引っ張られていきますが、どこか「楽しそう」でした。  二人の様子を見て、楼子は驚きますが、やがて暗い表情になって帰っていきます。手をぎゅっと握っていました。PCたちが声をかけた場合、「なんでも……ないです」と言います。  ちなみに、楼子は百治が「問題児」だということは知らなかったようです。自分と会った時はそんな感じじゃなかったと否定します。  そんな彼女に対して、PCたちは思うところがあります。PC全員は、「大切な想い」を1つ獲得します。 ●事件の導入  PCたちは、「強い魔法の力」を感じ取ります。同時に、目の前の空間が「歪んだ」ような感覚を覚えます。  その後、MAGIAから連絡を受けます。  MAGIAによると、「アンティークが暴走したかもしれない」とのことです。過去の事例から、「空間や認識に影響を及ぼすアンティークの力が働いている」とわかります。 「誰が被害を受けているのか」もわからないですし、「具体的に何が起こっているかわからない」ので、何が起こっているのかを把握して、MAGIAに報告をしてほしいという話を聞けます。  幸い、魔法使いや魔具生物は、アンティークの影響を受けにくいです。アンティークによって歪められたところがあれば、認識することができるでしょう。 ■アイキャッチ  アイキャッチはルール通りに進行します。 ■異変調査フェイズ  調査を始めたPCたちは、街の風景に違和感を覚えます。 「何かが隠されている」と直感します。おそらく「場所」と「人」がそれぞれ隠されているということまではわかります。  ただ、誰が消えているのかはわかりません。地道に街の人や知り合いに話を聞くしかないでしょう。  もし、プレイヤーが何をすればいいのか迷っている場合は、楼子の両親から「心配しすぎかもしれないけど、少し前から楼子の姿が見えないから心配」だという連絡が入ったことをPCに伝えましょう(退院したばかりで心配なのです)。  また、少し探しても桐野百治の姿が見つけられないということも伝えてよいでしょう。 ●人物 棟本楼子  棟本楼子についてPCたちが調べます。  彼女の両親に話を聞いたり、共通の知り合いに声をかけてみます。  すると、彼女はしばらく前から姿を消しているということがわかり、両親がとても心配していることがわかります(PCたちは知り合いなので、詳しく調べるまでもなくそこまでわかります)。  そのあと、PCは彼女が行きそうな場所や、家を(両親の許可を得て)探索することができます。  PCのうち1人は【慈愛】で判定を行います。興味は《整頓》です。  判定に成功すると、「入院中にいつも使っていた薬」が彼女の家や行きつけの場所からなくなっていることに気付きます。  その薬(YFKI-M01と言います)は「念のため持っている」ものであり、病が完治している今は必要ものです。  副作用が強く、強い眠気が訪れてしまうものであり、これを使っていたころの楼子は一日の大半を眠っていました。  PCたちは、両親から「もしあの子に会ったら必要になるかもしれないから」と「YFKI-M01」を1つ受け取ります。  判定に失敗した場合、【がんばり】を1点消費して、判定に成功したことにできます。また、ほかのキャラクターがこの判定を行おうとした場合、【がんばり】を1点消費します。  また、PCが「楼子が読んでいた本」を気にした場合、それも調べられることを伝えましょう。「楼子の本」の項目を参照します。 ●物 楼子の本  楼子が読んでいた本です。  英語で書かれた童話であり、とても古びたものです。  楼子は辞書を片手に、この本を読み進めていました。  この本からヒントを探す場合、 PCのうち1人は【欲望】で判定を行います。興味は《書物》です。  判定に成功すると、「この本はグリム版の赤ずきんではない(多くの人に知られている赤ずきんの結末とは違う)」ことがわかります。  大きな違いとしては、「お婆さんを食べた狼を退治する猟師は現れず」「赤ずきんが食べられて終わってしまう」お話です。  楼子はこの本を読んで、何を感じていたのでしょうか。この心情は、役立つような気がします。クライマックスカード2とクライマックスカード3の【困難度】が1点ずつ減少します。  判定に失敗した場合、【がんばり】を1点消費して、判定に成功したことにできます。また、ほかのキャラクターがこの判定を行おうとした場合、【がんばり】を1点消費します。 ●物 YFKI-M01(わいえふけーあい えむぜろいち)  楼子が使っていた薬です。  調べてみても、専門的なことはよくわかりませんが、かすかに「魔法の力」を感じます。  PCのうち1人は【慈愛】で判定を行います。興味は《魔法》です。  判定に成功すると、この薬は、「どこかに行こうとしている」ことがわかります。  おそらくですが、ほかの薬も「どこかに飛んで行ってしまった」のでしょう。そこがどこなのかは、魔法の力で「この薬を動かし」その後を追うことで辿ることができます。  以降、「YFKI-M01を追う」ことができます。その項目を参照してください。  判定に失敗した場合、【がんばり】を1点消費して、判定に成功したことにできます。また、ほかのキャラクターがこの判定を行おうとした場合、【がんばり】を1点消費します。 ●YFKI-M01を追う  PCたちは、手に入れたYFKI-M01を自由にさせます。  すると、薬はふよふよと浮かんで、「ある場所」に行きます。  そこは、「椿姫総合病院」という場所でした。PCたちは、ふしぎと「はじめて訪れたような」気がします。  ただ、それは魔法の力によるものです。この場所から強い認識阻害の魔法を感じます。  YFKI-M01は敷地内に入り、「憩いの森」へと入っていきます。 ●人物 桐野百治  桐野百治について調べてみますが、ふしぎなことにどんな人に話を聞いたとしても、「桐野百治? そんなやついたか?」という反応が返ってきます。  彼のことは、ほとんどの人が知りません。生きてた痕跡(彼の持ち物が残っているなど)は見つけられますが、誰の記憶にも残っていないのです、「ああ、そういえば。あなたたちと同じようなことを聞いてきた人がいたな」という情報が聞けます。  その人の特徴を聞く限り「●マスターシーン 棟本楼子と憧れのお兄さん」で登場した女性であるとわかります。 ●人物 矢敷亜子 「人物 桐野百治」を調べている場合、もしくはマスターシーンなどで「彼女の名前を聞いている」場合、彼女を探して話を聞くことができます。  そうでない場合は、【陽気】で判定を行わなければ話を聞けません。判定に使用する興味はありません。この判定に失敗すると、【がんばり】を1点消費しますが、話を聞くことはできます(判定に成功すると【がんばり】の消費はありません。判定の成否にかかわらず話を聞けるということです)。  彼女は、PCたちに「桐野百治……って人、知りませんか?」と深刻な顔で言います。どうやら、矢敷亜子は「桐野百治のことを忘れています」が、「自分の持っていたメディアなどから痕跡を見つけて、大事な人だったと確信」し探して回っているようです。  彼女の表情からは、焦燥感が見て取れます。PCたちが訊ねた場合、「私は、その人のことを知りません。でも、大事な人だった気がするんです」と胸を押さえます。そのうえで、「あっ」と何かを思い出します。 「そういえば、確か……病院。病院によく行っていた」と言います。ただ、その先が思い出せないようで「あれ? どこの病院だったかな……」と反応を返します。  ここで、PCたちは「認識阻害」が働いていることがわかります。 ●場所 楼子が入院していた病院  PCたちが楼子が入院していた病院について調べようとすると、「強い魔法の力」を感じます。  その後、楼子が入院していた病院について、名前すら思い出せなくなります。強い認識阻害の力が働いているのでしょう。  調べようとしても、「何を調べようとしていたのか」忘れてしまいます。おそらくは、この病院こそがアンティークやそれを使う人にとって重要な場所な場所なのでしょう。 ●場所 椿姫総合病院(つばきそうごうびょういん)  PCたちがなんらかの方法で椿姫総合病院の場所を知った場合、その場所を知って中に入ることができます。  病院内は通常通り営業しています。  敷地の中には、「憩いの森」という場所があります。それほど大きくない、入院患者と見舞客用のスペースです。この病院に助けられたアーティストが、お礼にとこの「森」を作ったと看板に書かれています。  その森の前に、うつろな目をした桐野百治が立ち尽くしています。憩いの森をじっと見つめています。  彼は、「森にいかないと……」「でも、どうしてここに入らないといけないんだ?」「あの子はもう、健康になった。大丈夫なんだ。この病院に来る理由なんて……」と自問自答しており、動きません。  どうやら、彼は「楼子が元気になったこと」「楼子が退院してこの病院に通わなくてもよくなったこと」を心から喜んでおり、そのため必要もなくこの病院に来ることに対して強い拒否反応を示しているようです。  アンティークの力によって暗示をかけられているようですが、それでも彼の強い意志を曲げることはできていないのかもしれません。  PCたちは、桐野百治に話かけられますが、彼はうつろな顔で自問自答するだけで、反応はありません。アンティークの強い影響によって混乱しており、外部からの干渉を受け付けないようです。  PCたちは、憩いの森から強い魔法の力を感じます。この森に入れば、アンティークとの対決が待っているでしょう。 ●場所 MAGIA  PCたちがMAGIAを訪れると、「まだ今回の事件については調べている最中」であることがわかります。「何かわかったら知らせてほしい」とのことです。  もし、事件についての調査が進んでいる状態(桐野百治についての記憶が失われている、椿姫総合病院に認識阻害がかかっている、楼子が使っていた薬に魔法の力がかかっているのうちいずれか1つ)で尋ねると、たいへん褒められて、「魔法の薬」を渡してくれます。  この薬は、PCたちの魔法の力を助けるもので、飲むだけで少し元気になるポーションです。PC全員の【がんばり】が1点ずつ上昇します。PCが2人以下の場合、上昇する【がんばり】が2点になります。  PCたちが椿姫総合病院の「憩いの森」に向かうと、異変対決フェイズに移行します。 ■異変対決フェイズ  PCたちは、憩いの森に入ります。外から見た時は「小さなスペース」でしたが、入ってみるとそこは広大な森に変わっていました。  森の入り口には椅子が置いてあり、椅子の上にバスケットが乗っています。バスケットの中には、YFKI-M01が入っています。PCがひとりでにYFKI-M01が動いたと知っている場合、飛んできたYFKI-M01はここに入ったのだと確信できるでしょう。  PCたちは森を進みます。クライマックスカード1を渡してください。  クライマックスカード1を解決すると、PCたちの目の前に「狼のぬいぐるみ」が現れます。狼のぬいぐるみはPCたちの姿を見て、「……違う!」と言って、去っていってしまいます。  クライマックスカード2を解決すると、PCたちは森の中に家を見つけます。そこに入ると、楼子が入院していた病室が現れます。楼子は既に退院したはずなので、これは過去の情景を再現したものでしょう。  その部屋の中心には「ティーテーブル」があります。それがアンティークでしょう。使い手は、部屋のベッドの中で眠っている楼子です。  アンティークを直接止めることはできません。クライマックスカード3を渡してください。  クライマックスカード3を解決すると、「お婆さんを助けるために、狼が待つとは知らずに赤ずきんは森を抜けていく」「お婆さんを元気づける薬の名前は、YFKI-M01」「すべてを壊す猟師は、現れない。だったのに……」という楼子の声が聞こえてきます。  それは狼のぬいぐるみから聞こえてきます。心の声であり、彼女の口から出たものではありません。無意識の現れでしょう。  どうやら彼女は、アンティークの力で自分の中にある望みが引き出されて、「ハイ」になっているようです。どうにかして、落ち着かせて、アンティークとのつながりを断たなければなりません。  クライマックスカードをすべて解決すると、説得は成功し、楼子は起き上がります。  そして、「わかってる。全部、卑怯な私の望みだから……」とPCたちに頭を下げます。 ■エピローグ  説得できた場合、PCたちの活躍によってアンティークは魔法の力を解き、憩いの森は元の姿に戻ります。ちょっとした小部屋程度の大きさだったと、改めてわかります。  楼子の姿を見つけた桐野百治が、心配しながら飛び込んできます。その姿を見て、楼子は「心配してくれてありがとう。私は、大丈夫だから」とがんばって笑いました。  MAGIAからも事件が終息したことが確認され、PCたちは感謝されます。ティーテーブルのアンティークも回収されることでしょう(ティーテーブルの来歴についてプレイヤーが気にした場合、ここで「登場するアンティーク」欄を参考に解説しましょう)。  その後、楼子たちは日常に戻ります。時々胸が痛むようなことがあるようですが、それでも「ぐっとこらえたり」せずに、PCたちに愚痴を言ったり、悔しいことを伝えるようになったりします。  矢敷亜子のことをプレイヤーが気にした場合、彼女は記憶を取り戻し、今回の事件をきっかけに桐野百治との仲を見つめ直し、より仲良くやっているようだと伝えてください。  バッドエンドの場合、認識阻害は続きますが、事態を重く見たMAGIAが多くの魔法使いを呼び寄せます。魔法の力で無理やり事件の解決を図りました。楼子も助けられますが、それ以降暗い表情を見せるようになりました。  エピローグを描いた後、このシナリオを終了します。お疲れ様でした。 ■クライマックスカード4枚 ・クライマックスカード1  「憩いの森」の中は、大きくて、迷いそうなぐらい複雑。  外から見たときは小さかった。  こんなに大きくなったのは魔法が関係していると思う。  先に進むための手がかりを見つけないと。  楼子が残したもの、ないかな?   困難度1 ・クライマックスカード2  森の奥から、うなり声が聞こえてくる。  これは、狼の鳴き声?  その声を聴いていると、体が重くなってきた。  拒絶する力を感じる。  こっちに来るなと警告している?  先に進むには、強い意志が必要そう。 困難度2 ・クライマックスカード3  森の中にあった家の中に入ると、そこは病室だった。  ベッドの上に、安らかに眠っている楼子がいる。  近づこうとしたら、ベッドの中から「狼のぬいぐるみ」が飛び出してきた!  口を大きく開けて、私たちを追い返そうとしてくる!  なんとか大人しくさせなきゃ! 困難度3 ・クライマックスカード4  狼はなんとかできたけど、まだ楼子は起きてこない。  楼子が待っているのは、きっと「あの人」だ。  だから、待っているのは、私たちじゃない。  そんな楼子を起こすために、私たちは何をすべきだろうか。 困難度4